国内外からの観光客数が2019年に1016万人となり、初の1000万人超えに沸いた沖縄経済が一転、大きな痛手を被っている。6月19日の移動制限解除後、街には観光客の姿が徐々に戻りつつあるが、以前の水準までの回復は当面厳しい。飲食店や土産品店など小さな店舗は早々と閉店に追い込まれており、観光産業に依存する沖縄経済の脆さが露呈した。地場を代表する企業の動きから、沖縄経済の今を3回の連載でリポートする。
インバウンドに依存した経済
那覇市内の観光地、国際通り。都道府県をまたぐ移動自粛が解除されて以降、人通りはやや増えたものの、臨時休業を知らせる張り紙が貼られたシャッターの多くは閉じたまま。国際通り商店街振興組合連合会によると、6月25日現在、営業再開したのは通り全体の3割にとどまる。沖縄観光コンベンションビューローは沖縄を訪れる観光客が、トップシーズンとなる5~8月、前年同期に比べて285万人(77%)減ると予想。同じ期間の観光消費額の損失は2240億円に上ると推計している。
感染者の増加で、大型イベントの中止が続々と発表されていた2月中旬、宮古島を拠点に「雪塩」ブランドの製塩事業を手がけるパラダイスプラン(本社・沖縄県宮古島市)は、国際通りとその周辺に展開する塩専門店「塩屋(まーすやー)」5店舗のうち、本年度中に2店舗の閉店を決めた。
「逡巡してはいけない。撤退のときこそ勇気だ」──。パラダイスプランの西里長治社長(52歳)は、国の補助制度の活用を含め、億円単位に上る運転資金の調達を急ぐと同時に、店舗縮小の手続きを加速させた。東京都が感染爆発への警戒を呼び掛けた3月末には、東京の麻布十番店と宮古島市内の店舗を閉じた。
店舗展開のターゲットにしてきたところはどこも、観光客の利用を想定した立地が中心。近年はインバウンド客が急増し、6割以上を占めるまでになっていた。
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