ANA「かろうじて営業黒字」後に待ち受ける多難 主力の国際線、LCC戦略の見直しは不可避に
「急激な需要の落ち込みを受け、運航規模の調整を行ったものの、売上高の減少規模(の影響)がはるかに大きかった」
ANAホールディングスの福澤一郎常務執行役員は、新型コロナウイルスの影響が直撃した2020年1~3月期を、このように振り返った。
固定費負担が重く、6割減益に
国内航空最大手の全日本空輸やLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションを傘下に持つANAは4月28日、2020年3月期決算を発表した。売上高は1兆9742億円、前期比4.1%の減にとどまったが、エアラインビジネスは、人件費や機材関連費など固定費の営業費用に占める比率が「約6割」(福澤氏)と損益分岐点が高いため、営業利益は同63.2%減の608億円に落ち込んだ。
2020年に入って旅客事業が国際線、国内線ともに急減速し、2020年1~3月期の売上高は3920億円(前期比19.9%減)、営業利益は588億円の赤字に転落した。2020年3月期はかろうじて営業黒字にとどまったものの、多くの会社がそうであるように、2021年3月期の業績予想は新型コロナウイルスの感染拡大が収束する時期が見通せないため「未定」とした。
ただ、業界団体のIATA(国際航空運送協会)は2020年の航空業界について、旅客収入が2019年の45%程度になると見込んでいる。こうした見通しを踏まえ、ANAの福澤常務は「現時点では2020年8月前後の収束を前提に、2020年度末に(需要がコロナ禍以前の)5~7割程度まで回復するシナリオを描いている」と述べた。
前2020年3月期のANAの航空事業の売上高は1兆7377億円(うち旅客事業が79.1%)。IATAの予測通りに旅客収入が55%減少するならば、仮に貨物事業などの売上高が横ばいに推移しても、売上高は1兆円弱に減少する。営業費用1兆6881億円のうち、固定費は6割として単純計算すると、航空事業は変動費を差し引かずとも赤字になってしまう。
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