ANA「かろうじて営業黒字」後に待ち受ける多難 主力の国際線、LCC戦略の見直しは不可避に
しかし、コロナウイルスの感染拡大を受け、その計画も軌道修正を迫られている。「伝統的な(ビジネスの)慣行が、テレワークなどにより大きく変わりつつある。国際線を中心に(出張がリモート会議に変わるなど)動向が変わることを見込み、国際線拡大(の見通し)はマイルドにすることも考えなくてはいけない」(福澤常務)というのだ。
実際、同社の片野坂真哉社長は2016年の東洋経済のインタビューで「今の世の中はインターネットが出てきて、本当に変化が激しくなった。一番怖いのはインターネットで便利になり、人が移動しなくなることだ。旅行をしなくても、スマートフォンでアフリカの映像を見ることができる」と話している。
LCCの競争激化もあらわに
そのため、近年のANAは飛行機に乗って移動しなくとも済む時代の生き残り策を模索。VR(仮想現実)などの最新テクノロジーを用い、異なる複数の場所に設置したロボットを遠隔操作することで、世界中に「事実上の移動」ができるシステム「アバター」を事業化するなど、時代の変化へ対応すべく動きつつあった。ただ、あくまで成長の柱は国際線だと位置づけてきた。
今回の決算で、期待をかけてきたLCC事業がコロナ以前から壁にぶつかっていたこともあらわになった。ANAは傘下にあったLCC2社「ピーチ」と「バニラエア」を2019年、ピーチに一本化し、「アジアのリーディングLCCを目指す」としてきた。しかし2020年3月期決算では、ピーチののれん減損を230億円弱計上したのだ。
LCCが低運賃でも利益を上げられる理由は、片道4時間程度での短距離路線を高頻度で運航し、機材回転率を最大化することにある。当然のことながら、各社の運航便は国内か台湾、韓国、中国といった特定路線に集中し、LCC各社の競争が激化していた。福澤常務は「のれんの金額は500億円近く残っていたが、足元のピーチのキャッシュフローが想定より厳しい状態になった」と語る。
新型コロナウイルスによって国際線の成長鈍化が早まるのなら、ANAは早晩、今後の成長戦略見直しを余儀なくされる。LCCの不振に至っては、仮にコロナの影響がなかったとしても解決を迫られていた経営課題だ。コロナ禍を乗り切ったとしても、ANAは前途多難な道のりを歩むことになりそうだ。
ANAホールディングスの株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら