宮古島の「雪塩」、訪日客戻らない前提の生き方

沖縄の観光ブランドがコロナ後にかける活路

2014年度と2018年度を比較すると、沖縄を訪れる国内客が13%増なのに対し、インバウンド(訪日外国人観光客)は3倍に急増した。消費額の面での貢献度も大きい。県内総生産(消費支出)に対するインバウンド消費額の割合は沖縄が6.5%で、京都(4.1%)や大阪(3.4%)、東京(3.2%)を上回り、日本全国で最も割合が高い。インバウンド消費の恩恵が首都圏や都市部に偏る中、沖縄の誘客力は地方の中でも別格だった。

「塩屋(まーすやー)」の魅力は、なんといっても商品開発と提案力にある。売り場には、「雪塩」だけでなく、国内外から集めた塩のほか、料理や食材に合うよう研究開発した合わせ塩など650種類のアイテムがそろう。同社は、塩に関する専門知識を有する「ソルトソムリエ」の資格制度を独自に設け、スタッフを育成。顧客との対話の中から好みを引き出し、食卓を豊かにするアイデアを提供、固定客を増やしてきた。

それだけに、急激なインバウンド需要に従来のマーケティングが通用しないジレンマを抱えた。国や地域、年代によって好みや求めるものが異なり、十分に対応しきれない。西里社長は「商品づくりで、どこを向けばいいのかわからなくなっていた」と明かす。

宮古島のものづくりの発信拠点「島の駅みやこ」で取材に応じる西里長治社長=6月11日(筆者撮影)

コロナ禍によって消滅したインバウンド客は「3年は戻らない」と西里社長は見ている。店舗展開では現在の15店体制から11店に縮小しながら、「固定費のかかるリアル店舗の展開を根本から見直していく」と話した。

起業の原点、「島の活性化のため」

世界的なパンデミックによって、経営の足元は大きく揺さぶられたが、地域の人々の暮らしを守る観点においては、観光のあり方を問い直すチャンスにもなった。

西里社長が、沖縄本島で5年勤めた農協を退職した後、故郷の宮古島に戻り起業したのは26歳の頃。「宮古島に観光客を呼び、島全体を活性化させるため」だった。サトウキビくらいしか産業のない貧しい島。進学のため島を出ざるをえない若者が、就職で再び戻ってこられるようにしたいと、起業を目指した。

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