コロナ禍ものともせず!儲かる半導体関連業界 テレワークやゲーム需要が回り回って恩恵

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こうした問題を解決するためには、データセンターの増設などのインフラ整備が必要になる。そこにはメモリが大量に使われるため、それらを作る半導体製造装置メーカーも潤うという図式なのである。

さらに消費者向けのビジネスでも一層のIT化が進むのではないかという期待が大きい。たとえば飲食店での注文でスマホを使ったり、配送などで遠隔ロボットを使ったりすれば、半導体需要に直結する。テレワーク拡大に伴うパソコン需要の拡大も現に起こっている。こうした生活様式の変化がコロナ収束後も続くと見る向きは強い。ディスコの関家一馬社長は「一度便利なものを体験してしまえば、一気に広がっていく」と期待を示す。

半導体を作るには基板となるシリコンウエハの形成からチップの切り出しまで400~600もの膨大な工程がある。それらに対応する装置を、複数の企業が役割分担していることから、各社のシェアが高いのが特徴だ。たとえばディスコはチップの切断装置でシェア7割超を誇る。事実上、世界中の半導体メーカーが顧客になるため、半導体市場の勢力図の変遷にかかわらず安定した経営ができることが特徴だ。

これは半導体製造装置にとどまらない。材料であるシリコンウエハや半導体レジストも同様だ。シリコンウエハを提供する信越化学工業SUMCOにも追い風が吹く。半導体レジストの場合、最先端プロセスであるEUV(極端紫外線)露光向け製品が2019年、日韓関係の悪化で輸出できなくなると心配された。これに対抗し韓国が自国企業による生産に乗り出す動きも見られたが、各製品・装置に応じた微妙なすり合わせが必要な最先端品を代替するのは容易でなく、日本勢は他社の追い上げを許していない。

自動車向けが厳しいルネサスは減産へ

むろんすべてがバラ色なわけではない。懸念材料は米中貿易摩擦だ。アメリカ政府は中国のファーウェイに対する締め付けを強めており、ファーウェイの主要取引先である台湾TSMCに対して、取引しないように求めている。この問題が長引けば、半導体業界全体への影響は必至で、製造装置や材料のメーカーにも悪影響を与える可能性がある。今年11月にはアメリカ大統領選があり、焦ったトランプ大統領によって、その前に「どんなことが起きてもおかしくない」との警戒感も広がる。

また、半導体製造装置・材料とは裏腹に、激しい競争にさらされているのが半導体そのものを作るメーカーだ。特に、自動車向けに「走る・止まる・曲がる」といった基本的な挙動を制御する半導体で強みを持つルネサスエレクトロニクスは、自動車業界の急失速のあおりを受けている。

「オートモーティブは非常に見通しがしづらい。4~6月期を底に上がっていくとは受け止められず、底を這っていくか、場合によってはちょっと弱含む」。ルネサスの柴田英利社長は5月29日、投資家向けの説明会でそう発言した。同社にとって車載用は売上高の約半数を占める主力製品。電動化や先進運転支援システム(ADAS)は半導体の搭載数増が期待されるものの、足元では「そもそも自動車の台数自体が減っているのだから販売増など望めない」(ルネサスの取引業者幹部)状態だ。同じく車載比率の高いロームなども同様に今期は苦しい業績となりそう。

苦境を受けてルネサスは工場の一時停止を含めた生産調整に踏み切る予定。これは在庫管理に失敗、調整のために生産を止めた2019年に続いて、2年連続になる。ルネサスは特定市場の波による影響を軽減するための施策で、2017年と2019年には、あわせて1兆円もの巨費をかけた大型買収で事業を拡大させた。データセンター向けの製品が多いこれらの事業は、比較的堅調に推移しており、改革の取り組みが功を奏したといえる。

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