コロナ禍ものともせず!儲かる半導体関連業界 テレワークやゲーム需要が回り回って恩恵

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ただ自動車産業を含めた競争環境は決して楽観できない。強固な関係を築いていた日系自動車メーカーも、最近ではルネサス以外からの調達を増やしている。一方で攻勢に回るはずの欧米の自動車メーカー向けも、他社の地盤を崩せないでいる。ルネサスの車載用マイコンのシェアは低下を続けており、巨額の研究開発費用が必要な半導体業界の中で競争力を維持していけるのか、正念場が続く。

実のところ、目下、日本で勢いのある半導体メーカーはソニーである。そのソニーも、スマホのカメラ向けCMOS(相補性酸化膜半導体)イメージセンサーで過半のシェアを握るが、スマホ端末の販売がコロナの影響もあって陰っている。スマホカメラは年々高度化が進み、多眼化や大判化を背景に搭載されるイメージセンサーも増えているが、2019年投入の新製品が2年目を迎え単価が下がっている最中。伸び続けてきたソニーの半導体事業は今期足踏みするとみられる。

時価総額数兆円の大型銘柄が誕生?

そして今期、最も注目される日本の半導体メーカーといえば、キオクシアだろう。キオクシアはNAND型フラッシュメモリの専業メーカーである。前期はメモリ価格の下落によって通期で1731億円もの巨額の営業赤字を計上した。だが市況反転を背景に、業績は急速に持ち直している。赤字の前期も最終の2020年1~3月期は121億円とわずかながら営業黒字を達成。今期もこれまで順調に業績を伸ばしているもよう。

そうすると気になるのは株式上場の行方だ。キオクシアは、前身の東芝メモリの発足当初(2018年6月)、「3年以内の上場を目指す」としていた。順調にいけば、今期中に上場の手続きが進むはずであり、そのためのお膳立てが進みつつある。大株主の東芝も今年6月、株の上場時には、保有するキオクシア株を売却する方針を発表した。上場すれば、時価総額で数兆円にもなる大型銘柄となり、その行方には注目が集まらざるをえない。

コロナ禍で世界経済が縮む中、半導体関連業界の好調は突出している。総悲観にとらわれることなく、株式市場は「勝ち組」を冷静に選別しているようだ。6月26日発売の『会社四季報』(2020年3集夏号)もぜひ参考にしていただきたい。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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