頭のいい人が「図を使って考える」3つの理由 AI時代に差が出る「抽象化思考」とは何か

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③思考の「見える化」ができる

図を描くと、思考の「見える化」もできます。思考の「見える化」は、思考のモレや矛盾、弱点を明らかにしてくれます。

大体の場合、頭で「わかった!」と思っても、その論理は「ゆるい」ことが多く、図にするとそのゆるさが白日のもとにさらされます。そして、えっ、これしか考えられてなかったのか……と自己嫌悪。思った以上に論理はタイトでないことが多いものです 。

「見える化」のメリットはほかにもあります。それは記録として残せることです。頭の中の記憶が消えても、図にしておくと、そこまで考えたことは消えません。そうすると、いつでもその図を取り出し、続きから考え、思考のビルディングブロックを積み上げていくことができます。

その図が手元になくても、一旦、大事なことを図に「見える化」した分、イメージがハッキリするので、いつでもどこでも考え続けることができます。

AIに勝つための抽象化思考

AI時代がやってくると、この「図で考える力」はますます重要になるはずです。

AIは、あるものの組み合わせを試すこと、つまり数え上げることは得意です。しかし、ゼロから考えることは苦手です。

おそらくAIに、「紙1枚の上に、何を考えるべきかも含めて考えて、何か描いてみて」と言っても何も描けないでしょう。しかし、人間にはそれができます。

図で考えることは、AIにはない人間特有の頭の使い方に関係しています。それは「ヒューリスティック」です。ヒューリスティックとは、過去の経験や学んだことなどから、暗黙裡にポーンと正解に近い答えに飛ぶ能力です。つまりここでは、図を描くことによってハッと気づく、に例えられます。

図を描くことは「現実を抽象化」することでもあります(すべてを描けませんから)。

図を使ってものごとを抽象化し、その抽象化されたイメージから構造や関係性を読み解く。そこから解決のヒントにハッと気づく。このアプローチは人間にしかできません。だから「図で考える力」は、これからの時代にますます求められる「人間ならではの力」のような気がするのです。

AIには「知識」ではかないません。なので、AIには「知恵」で勝つしかありません。それゆえAI時代になっても、逆にAI時代になるからこそ、「図で考える力」を鍛えることは得策だと言えるでしょう。

平井 孝志 筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授

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ひらい たかし / Takashi Hirai

東京大学教養学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)MBA。早稲田大学より博士(学術)。ベイン・アンド・カンパニー、デル(法人マーケティング・ディレクター)、スターバックス(経営企画部門長)、ローランド・ベルガー(執行役員シニアパートナー)などを経て現職。コンサルタント時代には、電機、消費財、自動車など幅広いクライアントにおいて、全社戦略、事業戦略、新規事業開発の立案および実施を支援。現在は、経営戦略、ロジカル・シンキングなどの企業研修も手掛ける。早稲田大学経営管理研究科客員教授、キトー社外取締役、三井倉庫ホールディングス社外取締役。著書は『本質思考』他多数。

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