「駅名の英語表記」はなぜこうもバラバラなのか 「ローマ字表記」が実に多様である深い理由

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促音(つまる音「っ」)と撥音(はねる音「ん」)についてもルールに違いがあるようです。「日本式」「訓令式」では、シンプルに促音は子音を重ね、撥音はnと決まっています。それに対して、「ヘボン式」の促音はshのときはsを重ねて、chのときにはtをつけるのだそう。駅名標の話のところでも出てきましたが、撥音はb, m, pの前ではmを使うというルールがあるそうです。

アポストロフィやハイフンの使用も

また、撥音のnのあとに母音やy/nが続くときには、拗音や促音と区別するためにアポストロフィやハイフンが使われるようです。「ヘボン式」や1937年の「訓令式」では「ハイフン」、「日本式」や1954年の「訓令式」ではアポストロフィとなっているよう。もう、覚えきれないですね、これ……。どれかに準拠しようと思っても、混同してしまいそうです。

撥音の後にハイフンを使用する例としては、東急電鉄「田園調布」駅のDen-en-chōfu、 JR「新大久保」駅のShin-Ōkuboなどがあります。ところが、東京メトロの「溜池山王」駅はTameike-San-noではなく、Tameike-sannoという表記みたいです。妙にメトロだけ独自路線な気もするのですが、メトロの表記はローマ字ではなく、やはり「英語」にしているということなのかもしれませんね。

chの前の促音の表記例としては、JR「八丁堀」のHatchōbori、東京メトロ南北線「六本木一丁目」のRoppongi-itchomeなどがあります。sh前の促音はなかなか見つからなかったのですが、さいたま市にあるJR「日進」駅のNisshinが、東京近郊で筆者が思いついた唯一の例でした。皆さんのお住まいの地区には他にどんな例があるでしょうか。

鉄道会社ごとにローマ字の表記はさまざまのようですが、会社の管轄路線内でも表記法が統一されていないところもあるかもしれませんね。また、鉄道と道路標識の違いなども多くありそうです。

皆さんも、意識的にローマ字表記を観察して、矛盾した掲示などを発見してみてください。そして、どの表記がいちばんわかりやすいか考えてみてください。そもそもこの表記が、誰に向けたものなのかというところで、答えは変わるような気もしますね。

結局、駅名標にはどれがいちばん適しているのかというのは、筆者にはわかりませんが、I like Hepburn Romanization with chōonkigō (macrons) the best. (個人的なお気に入りはマクロンつきヘボン式ですね)

箱田 勝良 英会話イーオン 教務部 チーフトレーナー

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はこだ かつよし / Katsuyoshi Hakoda

1972年静岡県熱海市生まれ。1995年筑波大学国際関係学類卒業、株式会社イーオン入社。

講師として、これまでに約1万人を教える。スクールの講師を経た後、法人部教務コーディネーターとして、多くの企業の研修カリキュラム企画と講師を担当。楽天の社員の英語力研修も担当した。TOEIC(R)テスト990点満点、実用英語検定1級。

学生時代には1年間の留学以外には海外経験なしで、日本に住み暮らしながら英語力を飛躍的にアップさせた。その自身の経験を基に、現在は教務部のチーフトレーナーとして、イーオン全体の講師の研修やカリキュラム立案に関わる。

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