HSPの人が繊細さと上手に付き合っていく心得 心の悩みから来る「身体の異変」に蓋をしない
――HSPに男女差ってあるのでしょうか。
武田:男女差は、基本的にはないです。ただ、男性が繊細であると「細かいことは気にするな」と言われることがあり、表立って言える方は少ないかもしれません。
――歳を取っていっても気質に変化はない?
武田:小さな変化によく気づく、深く考えるといったHSPの気質自体は一生変わりません。でも、悩みはラクになっていきますよ。
対処法を学んでいくことで、「こういう時はこうしたらいい」というようなデータも年齢が上がるごとに蓄積されていきますし、自分の本音を言っても大丈夫だったという経験も積んでいくので、気質は変わらなくても生きるのは楽になっていくのです。
――ということは、人生経験が少ない若い人のほうが、多少なりとも苦しんだりしがちになりますか。
武田:人によりますが「年をとってラクになった」とおっしゃる方は多いですね。「最近の若者は繊細だ」と言われることがありますが、それは繊細な人が増えたわけではないと考えています。社会がだんだん厳しくなって余裕がなくなってきているため、仕事や人間関係に悩む人が増え、なんでこんなにつらいんだろうとインターネットで調べたりして、その結果自分がHSPだって気づいた人が増えたという感じです。
「何かができることで生き残らなければ」という社会になってきていると感じます。
フリースクールで講演させていただくことがあるんですが、学校に行けない(行かない)子どもの感じ方が、休職中の大人と似ていたことに衝撃を受けました。学校に行けない自分を責めてしまう気持ちが、休職中の大人が「働いていない自分には価値がない」と自分を責める気持ちとよく似ていた。
親の価値観が社会の成果主義と同化してしまうと、「ただ楽しむこと」よりも「なにかができること」に重きを置かざるをえない。そうすると、「何かができないと愛されない」「人より優れていないといけない」と感じ、しんどくなる子どもが増えている印象があります。例えば魚釣りに行っても、「あの子より大きい魚が釣れないなら、自分が釣る意味はない」となってしまう。
「できない部分が1つもあってはならない」と自分の中で思ってしまうと、すごくつらいですよね。学校でできなかったことがあった時にショックを受け、「できなければいけないのに、自分にはできない」という葛藤で動けなくなってしまうのです。
それは休職中の方も同じで、「会社に行けない自分は、社会の役に立っていない。そんな自分は生きていてはいけない」となる方は、気づかないうちに「できる、できない」が自分の中で唯一のモノサシになっている。カウンセリングでは、まずはそこに気づくところから始めます。
私が“SNS断食”を始めた理由
大木:例えばアイドルは、トーク力、ダンス力、歌唱力、華やかさ、ステージ映えが必須なので、私はすべてにおいて完璧にやらないといけないと思いながらやっていました。でも、そんな風にはできなくて精神的に崩壊してしまい「もう私には、書くこと以外できない。文章を書くのが一番好きで、無理なく自己表現できる。他の苦手なものはやらない、人の評価を気にしなくていい」、というふうに立ち返ることができたのです。
私は情報が一気にたくさん入ってくると、パニックになってしまうので、今年の1月から“SNS断食”を始めています。誰のこともフォローしないで、自分が欲しい情報だけを自分でとっていく形を取っています。これも1つの戦い方かなと思います。
武田:実は私も、Twitterはほとんどフォローしていなくて、フォローしている人も全員ミュートにしています。見ないわけではなくて、見たい時に自分で見に行くんです。
大木:やっているんですか!武田さんも!!
武田:勝手に流れてこないようにしています。自分の意志じゃないところで情報が入るのがしんどいので。
大木:わかります。私もFacebookほぼ全員ミュートです。でも、その人が嫌いなわけじゃないです、全然。
武田:そうそう。嫌いなわけではなく、“自分で選んで見たい”ということですよね。
大木:同じお仲間を発見できてうれしいです(笑)。
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