HSPの人が繊細さと上手に付き合っていく心得 心の悩みから来る「身体の異変」に蓋をしない

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武田 友紀(以下、武田):「疲れ果てた時にどう休息するか」というよりも、「疲れ果てる前に気づけるか」のほうが有効です。

私が著書や講演などで「繊細さん」と呼んでいるHSPは、刺激をたくさん受け取るため、人と話した後は疲れて、蛍光灯のあかりでも眩しいと感じたりします。そこまで疲れる前に「疲れてきたな」「この人と話すのは嫌だな」と気づいて、そこで止められるかどうかです。

武田友紀(たけだ・ゆき)/日本で数少ないHSP専門カウンセラー。自身もHSPである。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事後、分析力とHSP気質を活かしてカウンセラーとして独立。全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、日本全国から相談者が訪れている(写真:編集部撮影、取材はZoomで実施)

精神科医の泉谷閑示氏は、人間は“心”と“頭”と“身体”からできていて、心が何かを嫌がっている時に、頭が「そんなこと言うな」と蓋をしてしまうと、心の声が身体に症状として出てくる、と提唱されています。大木さんは著書『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人と住む選択をした』(祥伝社)で、駅のホームで突然歩けなくなった経験を書かれていましたが、これはまさにそれです。駅のホームで歩けなくなるもっと前の時期に、“体調が悪い” など、何らかのサインがあったのではと思います。その時に「私は疲れている」と思えたかどうかです。

大木:疲れを自覚できたかどうかということ?

武田:そうです。私は会社員時代、忙しくなるにつれて、ストレスによる肩こりも生理痛も重くなり、薬を飲んで働いていました。薬で抑えて通常通り働き続けるというのは、体のサインを“ガン無視”ですよね。心の声に気づかず、体に症状が出続けていた、ということです。その段階でちょっと休むなり、「この人と会うと肩が凝るわ」など気づいて対処できるかどうかです。自分の本音がわからないときは、まずは体に意識を向けてみるといいですよ。

心の悩みだからこそ身体にフォーカスする

大木:なるほど。私はもう、心のことばかり意識していました。

駅のホームで歩けなくなったとき、3日に1回通っていたマッサージで「なんでこんな異常に凝っているの? こんな凝っている人いませんよ」と言われていました。自律神経がおかしくて、タクシーに乗っただけで涙が出てくるとか……。もう限界はわかっていたはずでした。

心の悩みだからこそ、身体にフォーカスするというのはいい対処策ですね。

コロナウイルスの影響によって、リモートワークが半強制的に進んだ側面もあります。HSPにとっては在宅作業が増えると人に気を遣わず、楽になるのではないでしょうか。

武田:そうですね。人との距離が空くことで、自分のペースを保ちやすくなります。

苦手な人とも会わなくて済むので「それがとても楽」という声が多くあります。

一方で、自粛中に流行ったSNSのバトン(〇〇チャレンジなど)では、自分がどういう人間かうまく伝わっていないと、「ほしくないのにバトンが回ってきた」など自分に合わない案件が来てしまいます。HSPは断るのが苦手な傾向にあり、それに対応するのにも一苦労です。殻をかぶって人と接していると、その殻に合う人が来てしまうので、自分に合わない案件も来やすくなるのです。

大木さんは、著書を通して自分の考えを公表したことで、来る仕事も変わってきたのではないでしょうか。

大木:はい。変わってきたと思います。

次ページ以前は「身を切るライター」と言われていた
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