自民党が「9月入学」に踏み切れない本当の理由 柴山昌彦・元文科相に聞く秋入学導入の功罪

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――実際、オンライン授業に取り組んでいる教員からは「対面授業にない利点を見出した」と評価する声が聞かれますね。

今、私が非常に懸念しているのは、9月入学の議論によって、海外よりはるかに立ち遅れた日本の教育のICT化の取り組みが頓挫してしまわないかということだ。この機会を活用して、全国あまねくICT環境を整備することに努力を傾けるべきだ。

オンライン授業には、対面にはない特性が複数ある。黒板の前で先生が話しているのを聞く受動的な授業ではなく、子どもの特性に合わせて教育内容を変えることが可能で、グループワークなどもより深い議論ができるようになる。遠隔地から高度な専門性を持つ先生が授業を行うことで、教育の質を上げることにもつながる。教材がデジタル化すれば、算数や数学の授業で、図形などをディスプレイ上で立体的に表示し、理解を促進することも可能だ。

入学時期を変えても格差は埋まらない

私は文科相時代、教育のICT化を推し進めてきた。今は、義務教育を受ける児童・生徒1人に1台端末を配る「ギガスクール構想」と、Wi-Fi環境の整備を進めていく過程にある。あくまで過程なので、これが進んでいない地域の子どもたちが困っており、これまで後ろ向きだった自治体や教育委員会もようやく前向きに動き出したところだ。

入学時期を後ろ倒しにすれば、教育機会の格差が埋まるのかも疑問だ。むしろ、ICT環境を未整備のままにするほうが格差拡大を助長するのではないだろうか。教育の質の確保に向けて頑張っている皆さんの動きは止めてはならない。それでも、大学入試を公平に行うことが難しくなるといった問題が生じれば、別の対策を講じる可能性も排除されない。

――とはいえ、ICT環境整備に向けて迅速な対応をしている自治体はごく一部です。1人に1台端末が配られるのはいつ頃なのですか。

理屈のうえでは2020年度中に何とか対応を終わらせるべく、まさに準備を進めているところだ。2020年度の1次補正予算では、タブレット端末やWi-Fiの貸し出しに加え、機器を活用するための支援員を確保するための予算をつけ、一気に解決をしていく。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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