自民党が「9月入学」に踏み切れない本当の理由 柴山昌彦・元文科相に聞く秋入学導入の功罪

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――制度上は可能でも、一部の大学だけが導入すれば他大学や社会の制度との齟齬が生じるのではないでしょうか。

その通りだ。一部だけ導入するとかえって混乱を招くのではないかという懸念がある。留学生のニーズにあわせて秋季入学制度を一部導入した大学はあるが、全面移行には至っていない。

学習費や生活費負担への懸念

――今回の議論は、従来の国際化対応に向けた議論と分けて論じるべきだったのではないのでしょうか。

そもそも国際化に対応するための9月入学案は、入学時期を7カ月「前倒し」するというものだった。一方、今回議論になっているのは5カ月「後ろ倒し」するものだ。すると、浮かび上がる問題も異なってくる。

例えば、年度が延長された分の学習費、生活費の負担が増える懸念がある。さらに、医科大学の卒業が半年遅れることで、現在コロナの患者の治療で医療従事者が不足している中で、人材供給が滞ることにもつながる。こうしたことからも、「(現在のスキームは)理想形ではないのでは」といわれている。

さらに休校の状況が学校や地域によって一律ではないのも問題だ。学校によっては、5月中から授業を再開させている。対面授業が難しくても、オンライン授業を実施するなど、さまざまな工夫をしているところはある。9月入学を導入した場合、こうした学校の努力はどうなるのか。こうした点も含め、関係者から入念なヒアリングをしたうえで議論を行っていく必要がある。

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