日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大がいったん落ち着いた。とりあえず第2波がやってくるまでは、いろいろと考える時間がある。
コロナの影響やその対応が日本の問題点をいろいろと浮き彫りにしたが、その1つが「自前主義」ではなかっただろうか。あらゆる政策に対して、日本は極めて特殊な方法によって、何から何まで自国だけで対応しようとしたように見えた。
自前主義とは、企業経営でいえば自社開発の技術や製品を既存の取引先とだけ販売や取引を行う垂直統合型のイノベーションモデルのことで、「自前主義=クローズドイノベーション」と呼んでいる。
自前主義には、確かにさまざまなメリットもある。人材や研究開発を自前で賄うため、成功すれば技術や利益などをすべて単独で獲得できる。日本を代表する自動車産業や家電メーカーは、残らずこの自前主義を貫いて世界で成功した時代があった。
ところが、自前主義には致命的な欠点がある。開発に時間とコストがかかることだ。例えば今回のコロナウイルスのPCR検査キットの開発などは、ドイツや韓国がいち早く開発していたものを、日本はあくまでも自前主義にこだわった。アメリカやロシアなどのように、検査キットが不足すれば緊急的に韓国やドイツから輸入して対応する、といった発想はどうやら日本政府にはなかったらしい。
PCR検査、10万円給付で手間取った日本
とりわけ目立ったのが、政府や自治体のデジタル化の遅れだ。従来より、日本政府のデジタル化の遅れは指摘され続けてきたことだが、行政のITシステムがいざというときにはほとんど機能しなかったことを国民はやっと知ったと言っても過言ではない。
感染者数の集計がオンラインではなくFAXで行われていたという事実も驚きだったが、結果的に感染数の数字そのものの信頼を歪めた。
同様に、緊急経済対策として1人当たり10万円を給付する「特別給付金」の申請にあたっても、郵送よりも時間がかかるという理由により、各地でオンライン申請を中止したのも驚きだった。ほとんどの自治体で「郵送による申請にしてほしい」とアナウンスするなど、その不手際が目立った。オンラインで受け付けても、その後はすべて手作業という本末転倒のオンライン申請受け付けだったわけだが、これが日本の自治体の実力と言っていいかもしれない。
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