しかも驚くことに、特別給付金のオンライン申請のためのシステム開発を、京都市など複数の自治体が乗り出しているという報道もあった。住民からの申請を処理するシステムは、どの自治体も大差なく、国が一括して迅速にシステム開発を行い、各自治体にソフトウェアを配布すれば済むことだが、どういうわけだか日本の政府や自治体には「自前主義」という、とんでもなく非効率の前近代的な考え方が残っているようだ。
システム開発ひとつ統一できないリーダーシップのなさは、いったいどこに原因があるのか。
日本の行政のIT化は疑問だらけ
そもそも日本の行政のIT化には疑問が多い。例えば国税庁が開発した「国税総合管理(KSK)システム」は、国税庁の現場業務を把握していた文具店がシステム開発の中心に加わるなど、完成まで12年の歳月をかけて開発。その結果、開発費用もさることながら、その管理維持に莫大な費用が掛かっていると指摘されている。度重なる法改正やセキュリティー対策のための機能を追加していった結果、 現在でも年間300億円ほどのコストが、システム維持に費やされていると言われている。
確定申告時に使われる国税電子申告・納税システム(e-Tax)やマイナンバー対応と言った追加システムが加わったことで、大きな負荷がかかるシステムになってしまっている。
ちなみに、システムの独自仕様にこだわってコストを無駄に費やしているのは、民間企業でもあまり変わりはない。経済産業省の「情報処理実態調査(平成29年)」によれば、「1社平均IT関係諸費用」は9億6044万円で、このうち8割が現状維持のために使われているコストだと言われている。
日本の場合、行政全体のデジタル化が一向に進んでおらず、官民そろっていまだに「ハンコ文化」が根強く残っている。これでは生き残れないことを、今回の新型コロナウイルスの緊急事態宣言の中で国民の多くは学んだのではないだろうか。
むろん、こうした時代の流れを政府も指をくわえて見ていたわけではない。まずは2013年に「政府CIO」を設立している。情報化投資家開発、政府全体の情報システムやサービス全体を統括する目的で作られたもので、正式には「内閣情報通信政策監」と呼ばれる。この政府CIOがポータルサイトを制作し、行政のデジタル化を推進させようといううごきが始まったわけだ。
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