2016年12月には「官民データ活用推進基本法」を成立させ、データ流通環境の整備や行政手続きのオンライン利用の原則化など、官民データの活用に取り組み始める。2018年7月20日になってやっと「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定している。
そのデジタル・ガバメント実行計画が、実質的にスタートしたのは2019年12月20日。まさに新型コロナウイルスが、ひそかに中国武漢で猛威を振るい始める頃だった。結局、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックには間に合わなかった、というのが現状だ。ちなみに総務省でも「自治体システム等標準化検討会」を発足させ、2019年8月16日からスタートさせている。2020年3月16日には第8回目の分科会を行っており、住民票のシステム化について検討している。
残念ながら内閣府も総務省も、今回の新型コロナウイルスの対応には間に合わなかったわけだが、政府も行政のITシステムのデジタル化が進まない理由のひとつが、自前主義によることは一部ではよく理解されているのかもしれない。ではなぜ、自前主義から脱却できないのか。
例えば「オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)」が発行している「オープンイノベーション白書第2版」によると、 日本におけるオープンイノベーションの課題が垣間見えてくる。
時代は「脱・自前主義=オープンイノベーション」の世界
自前主義は、日本企業の旧来型の技術革新の方法であり、経営手法でもあった。世界に冠たる経済大国となった日本式経営を象徴する方法といってもいい。当時の日本企業はイノベーションを起こして成功した企業が非常に数多く現れたものの、最近の日本企業は大きくなりすぎて小回りが効かなくなり、技術も多様化しており、1社で新しいイノベーションを起こすのは極めて難しい状況に変化している。
にもかかわらず、日本の経営者は自前主義を信奉し、過去の成功事例にしがみついているのが現実だと指摘する。
とりわけ、雇用の流動性が低い日本の場合、人材不足が深刻で新しい技術開発を成功させる条件が整っていない。「オープンイノベーションなくして技術革新はない」――これが現在のビジネス界の常識と言っていい。
実際に、世界はとっくの昔に自前主義を捨てて、「脱・自前主義=オープンイノベーション」の世界に突き進んでいる。オープンイノベーションとは、2003年にアメリカ・ハーバード大学経営大学院のヘンリー・チェスブロウ教授が提唱した技術開発に関する概念のひとつで、技術開発を促進するために、あえて外部と技術やアイデアなどの情報を交換し合うことで、イノベーションのスピードを高めようというものだ。
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