自民党が「9月入学」に踏み切れない本当の理由

柴山昌彦・元文科相に聞く秋入学導入の功罪

――過去に論じられたメリットとデメリットは何ですか。

9月入学のメリットは教育の国際化だ。特に大学においては近年、留学生の受け入れや送り出しが活発になっている。国際交流を一層活発にするうえで、海外の大学で主流の9月入学を制度化することが利点となる。

日本の大学は夏に長期休暇があるため、夏休みの前に学年を終えてしまったほうが学校運営上も利点があるのではないか、という指摘もあった。

柴山昌彦(しばやま・まさひこ)/1965年愛知県名古屋市生まれ。90年東京大学法学部卒業後、住友不動産に入社。00年に弁護士登録。04年に自民党の衆議院議員として初当選し、以後当選6回。18年10月に第4次安倍第一次改造内閣で文部科学相臣・教育再生担当相。選挙区は埼玉県第8区(写真提供:柴山昌彦事務所)

一方のデメリット。最大の問題が、日本におけるさまざまな就職慣行や、会計年度との整合性をとるのが難しいことだ。9月入学を求めている自治体を含め、採用計画は4月の新卒一括採用をベースに制度設計されている。公的な資格試験も同様だ。過去、9月入学に踏み切れなかった最大の理由がこれだ。

解決策としては、大学入学後の半年間は授業のない「ギャップターム」を設け、大学の入学時期だけを9月入学にするという案も出た。ただ、「入学までの時間を無為に過ごすことにつながるのではないか」との指摘もある。

保育園の在園期間を延長できるか

――実務面でも、多くの制度変更が必要になりそうです。

どこまで社会との調整を行うかにもよるが、教育に関する法律を見ただけでも変えなければならないものは複数ある。

例えば、現行の学校教育法の施行細則では「小学校の学年は4月1日に始まり、翌3月31日に終わる」と定められている。就学年齢や義務教育期間についての記述も、法律上明記されている。さらに、保育園への在園期間を延長させられるかなどを考えると、(2020年度や2021年度の9月入学導入は)非常にタイトなスケジュールになってくる。

ただ大学に限れば、実は制度的に9月入学を導入することがすでに可能だ。2007年の学校教育法施行規則の改正により、学校の設置者が学年の始期と終期を決められることになった。

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