ロイヤルリムジングループ(以下、ロイヤルリムジン)が4月8日、従業員600人に対して一斉に解雇を言い渡した問題は、解雇発表から1カ月以上が過ぎた今なお混迷が続いている。
当初は、失業手当(失業保険給付)を受給させて再雇用を図るという、従業員の生活を守るための“美談”のように取り扱われたが、むしろほころびが目立ち始めたのだ。
同社は、従業員に失業手当を速やかに申請するためという理由で、解雇発表後に『退職合意書』の提出を迫り、形式上は合意退職として事態を収めようとした。ところが不当解雇に当たる、と不服を申し立てた従業員たちが立ち上がり、団体交渉は現在も継続中だ。
一部の従業員は地位確認を明らかにするため、金子健作社長に解雇撤回を求めた。状況を見かねたロイヤルリムジンは解雇撤回を労働組合に伝え、発言や態度を二転三転させるという対応も明らかになっている。
5月16日から一部の事業を再開したが…
その後、解雇は無効だとして従業員としての地位確認を求める仮処分を申し立てていた従業員81名は、生活困窮で訴訟継続が困難になったという理由で訴えを5月11日に取り下げた。そんな混沌とした状況でも、同社は傘下の目黒自動車交通で5月16日から一部の事業を再開している。
こういった問題はロイヤルリムジン以外のタクシー会社にも起こっている。東京・国分寺市に本社を置くタクシー会社の龍生自動車は、4月15日に新型コロナウイルスの影響による業績悪化を理由に、従業員33名全員に解雇を通告した。
4月8日のロイヤルリムジンの騒動から、わずか1週間後での発表だった。5月8日、龍生自動車の従業員らは、解雇は不当だとして地位確認の申し立てを東京地裁に起こしている。
ロイヤルリムジンに端を発した一斉解雇の余波は、今後タクシー業界にさらに広がっていくことも予測される。
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