タクシー会社「600人解雇騒動」が混迷続く実情 ロイヤルリムジン、直前まで積極拡大の謎

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突然グループ傘下になったかと思えば、親会社の都合で遠回しにリストラ案を提示される。ファイブスタータクシー関係者の訴えは切実だ。ロイヤルリムジンの経営判断が、多くのドライバーや業界全体に大きな影響と混乱を及ぼしたことになる。

親会社であるアイビーアイ社に、ロイヤルリムジンとファイブスタータクシーの通知書との直接的な関係について質問書を送り、筆者が電話を通じて回答を求めたところ、5月18日の期限日までに返答はなかった。代表取締役の金子健作氏にも5月18日に電話で問い合わせたところ「お答えできません」という回答だった。

また、ファイブスタータクシー株式会社にも同様に、ロイヤルリムジンの意向によって雇用対策の通知書を送ったのか、という質問書を筆者が送付したところ、「弊社としては無用な賛否両論を避けさせていただきたく、コメントを差し控えさせていただきます。また、従業員に対しては常に回答できる体制を整えておりますので、貴殿に対する回答は控えさせていただきます」との回答があった。

コロナショックは会社単体では到底解決できない

ロイヤルリムジンの関係者はこんなことも漏らしていた。

「会社の対応に不満はありますが、正直、このコロナ禍では会社単体で解決できる問題の範疇は越えています。政府の対応などが遅れれば、会社も体力的にもたないでしょうから」

この発言は、政府のコロナ対策に対する悲鳴ともとれる。

休業手当の原資ともなる雇用調整助成金は、20万件以上の相談件数に対して実際の支給決定件数は4500件余り(5月11日時点)。相談から申請に至るまでの手続きも難しく、十分に機能しているとはいえない。

そして今回のロイヤルリムジンのような失業手当の濫用ともとれる経営判断は、失業保険制度の問題点も噴出させている。このような危機に直面したとき、窮状に陥るのは今回のような従業員だ。

ロイヤルリムジン社の一斉解雇騒動を悪しき先例として片付けることはできない。だが、望む、望まないにかかわらず、こういった判断をする経営者が出てきてもまったく不思議ではないのだ。コロナが巻き起こした解雇問題はタクシー業界に限らず、あらゆる業種で起こりうる。決してひとごとではなく、自身にも降りかかる可能性を秘めているのだ。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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