立ち回りやコネ"だけ"の人間をはじくには? 品質を保証するための審査が「間違い探し」よりも難しい理由

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「本業」ではない仕事への残念な対応、いくつかの場合

ある経済学ジャーナルの表紙。左端に編集委員の名前一覧が掲載されている(真ん中は目次)

さて、前回(まるで「持ち込み原稿」?論文審査の裏側)お話ししたとおり、学者が書く論文の審査制度には、「審査にかかわるみんなが頑張らないための条件」がそろいまくっている。今回はまず、これまで現実に起こってきて、今も起こり続けているいろいろな問題を、(自戒も込めて)いくつかご紹介しよう。

まずは、レフェリーや編集委員が締め切りを守らないので論文の審査にやたらと時間がかかる。投稿した論文の返事が来るのは6カ月後くらいと思っていればだいたい間違いないが、時々、それよりずっと長く放って置かれることがある。僕の最長記録は1年ちょっとだが、何年も待たされたという文句を聞くこともある。

次に、レフェリーがほとんど論文を理解しないでレポートを書いてしまうこともあり、そんなときの評価はかなりいい加減なものになる。結果として、たとえば数学的な論証を重視するミクロ経済学理論のような分野で、数学的な正しさがちゃんと確かめられないままになってしまうことさえ起こるのだ(実際、かなりあると思う)

また、まれにどう読んでもイチャモンとしか思えないようなレポートを受け取ることなんかもある。特に理由も挙げず「この論文はつまらない、というかこの分野が俺嫌い」と書いてある程度ならまだしも、全然関係のない分野の話を持ってきて「こういう重大な問題のことを調べてないからこの論文はダメだ」とか。

はては、関係ない論文を持ってきて「◯◯さんの論文(実はレフェリー自身の論文)を引用してないからダメだ」とか。前回、匿名審査の制度は無記名投票みたいだと書いたけれど、こういうケースは匿名掲示板で「名無しさん」たちが罵詈雑言をぶつけあう状況にも似ているかもしれない。

※もちろん、ここに書いたのと似て非なる「良いレフェリーレポート」もある。たとえば論文が本当につまらないときに「つまらない」と説明付きで書いたものや、本当に重要な問題がその論文で調べられていないことを指摘するレポートは、掲載の判断をするときにとても役にたつのでありがたい。

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