立ち回りやコネ"だけ"の人間をはじくには? 品質を保証するための審査が「間違い探し」よりも難しい理由

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独創的な研究をしている「フリ」を排除するには?

たとえば研究の「発見」は面白いから自主的にやる人も多いかもしれないが、「発表」の部分はごく控えめに言っても、とにかく面倒な作業だ。でもこの「発表」の部分なくしては、科学知識の蓄積は望めないだろう。

それに研究には本当にピンからキリまである。その全部に研究費を費やし、研究職のポジションを与える余裕のある国は世界のどこにもないから、限られた資源は、何かしらの方法で振り分けなければならない。

たとえばこのとき、業績を求めず、自己申告のみに基づいて資源の振り分けを行うとしたら、独創的な研究をしている「フリ」をする者が大量に出てくる危険があるだろう。それこそ、まともな研究をしていないのに、コネを持っているだけのヤツとか立ち回りがうまいヤツとかが、研究職のポジションや研究費を無駄遣いして、本当に重要な研究に必要な資源が行き渡らなくなってしまいかねない。

とういわけで、何らかの審査の仕組みはこれからも必要とされていくだろうというのが僕の印象だ。とはいえ、今の論文審査のやり方にもいろいろな流儀があるし、新しい試みがあることも事実だ。ジャーナルという紙に載せて残すこと自体が大事だった昔と違って、専門誌への掲載が担うものとしては品質保証の側面が大きくなっているから、それに合わせて制度を変えていくべきなのかもしれない。

春休みなので、例によって出張している。スイス・チューリッヒの目抜き通り

……なんてことを考えながら、締め切り間際のレフェリーの仕事に戻ります。そうです、実は頼まれたレフェリーの仕事がきつくて、現実逃避してこの文章書いてました。ホントに、誰かもっといい制度考えてくれないかな。

スイスと言えばチョコレート。ホストのスヴェンさん、チョコレートごちそうさまでした!

 

 

小島 武仁 経済学者、東京大学大学院経済学研究科教授

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こじま ふひと / Fuhito Kojima

東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)センター長。1979年生まれ。2003年東京大学卒業(経済学部総代)、2008年ハーバード大学経済学部博士。イェール大学博士研究員、スタンフォード大学助教授、准教授を経て2019年スタンフォード大学教授に就任。2020年に母校である東京大学からオファーを受けて17年ぶりに帰国し、現職。専門は「マッチング理論」「マーケットデザイン」。

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