岩田健太郎「よく走る人ほど風邪ひきやすい訳」 「免疫力UP」の誘い文句は疑ったほうがいい

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マラソンのような無理をして免疫力が下がることはよくあるんですけど、かといってアップする方法はない。でもあえて言うならば、免疫力をメンテナンスする、正常な状態に維持する方法ならあります。

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それは休養、睡眠、適度な運動……「適度」というのは、マラソンみたいな過度な運動じゃなくて普通の運動ですね、そして食事栄養のバランスです。食事も特別なサプリメントとか必要なくて、果物とか野菜に入っているビタミンを摂れば十分です。休養、睡眠、運動、食事……要するに普通にするのが一番なんです。

特別なことをする必要は一切ありません。と言われても「その普通が難しいんだよ!」と思う方も多いですよね。日本の社会の場合、「普通のこと」ができないから、その結果として病気になる人も多い。けれども、残念ですが、睡眠不足を睡眠以外の方法で補うことはできません。

栄養ドリンクもあまり意味がない

睡眠不足が原因で病気になりやすい人は寝るのが一番だし、疲労がたまっている人は休養を取るしかない。疲れているときに栄養ドリンクを飲んでも意味はありません。あれにはビタミン以外にもアルコールとかカフェインとかが入っていて、「疲れてないよ」と錯覚を与える効果があるんです。

なんか元気になった気分になるけど、疲労そのものを取ってるわけではなく、単に自分をごまかしてるだけなんです。昔、よく鉱山とかでヒロポン注射を打って、疲労困憊の人たちを無理やり働かせたわけですけど、やっていることはそれと一緒です。

繰り返しますが、疲れている人は休養、寝不足の人は睡眠、栄養が足りない人は栄養、運動してない人は適度な運動と、普通のことをするしかない。バランスなのです。免疫力はメンテナンスするものであって、アップするものではない、という考え方が大事になってきます。

岩田 健太郎 神戸大学教授

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いわた けんたろう / Kentaro Iwata

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。ニューヨークで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時、またアフリカではエボラ出血熱の臨床を経験。帰国後は亀田総合病院(千葉県)に勤務。感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任する。著書に『「感染症パニック」を防げ! ?リスク・コミュニケーション入門』『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(以上が光文社新書))など著書多数。

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