「PCR抑制」日本が直面している本末転倒な現実 山梨大学学長「不十分な検査体制は日本の恥」

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東京都江戸川区で4月22日、ドライブスルーによるPCR検査の検体採取のシミュ―レーションをする医療関係者(写真:ロイター/Issei Kato)
新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、山梨大学の島田真路学長(皮膚科学)が「PCR検査の不十分な体制は日本の恥」などとして、政府の施策を激しく批判している。大学の公式HPや医療関係者向けサイトでの見解表明は、3月中旬以降、すでに5回。山梨大学医学部附属病院の院長も務めた島田氏の論点は、いったいどこにあるのか。5月6、8日の午後、2回にわたってじっくりと耳を傾けた。

検査抑制は政府の指示が行き渡ったため

――新型コロナウイルスの問題では、「日本のPCR検査は少なすぎる」との指摘が当初からありました。実際、「熱があるのに検査してもらえない」という声も途切れません。日本の検査体制とは、結局、どういうことだったのでしょうか。

厚生労働省は最初から「渡航歴や患者との接触歴などから、都道府県が必要と判断した場合に検査が行われます」と説明し、事実上、PCR検査に制限を加えてきました。そして、この判断基準は、保健所や帰国者・接触者相談センターに行き渡っている。だから、保健師さんたちは「基本的に検査してはいけない」みたいな気持ちで業務に当たってきたわけです。感染を疑われる患者さんが来ても「しばらく様子を見てください」みたいに対応してしまう。最近では、そのまま亡くなった人もいる。(厚労省は)罪深いことをやってきたと思います。

検査自体についても「保健所が核となってやる」という制限があったので、当然、検査に回せるリソースは少ないわけです。しかも、当初は、医師が「この患者はコロナに感染しているかもしれない」と判断しても、保健所か相談センターのお墨付きが出ないと、その患者は検査されなかったわけですから。

山梨大学付属病院の新型コロナウイルス感染症の専用病棟(写真:山梨大学)

――もっと検査できたはずだ、と主張されていますね?

PCR検査は、民間の検査会社や大学にとって比較的簡単な検査なんです。任せてもらえたら、もっとたくさん検査できたはずです。それを保健所だけにやらせようとするから、保健所がいっぱいいっぱいになってしまう。

1000人当たりのPCR検査数を国別で比較すると、日本は、医療水準がはるかに下のパキスタンと同じレベルです。PCR検査は、新型コロナウイルスを検出できる唯一の検査法です。「日本は感染を抑えている」と言う人もいますが、私に言わせれば、その検査をこれだけ制限しておいて「陽性者が少ない」「コロナ対策をうまくやっている」と評価するのは、あまりに本末転倒な議論です。

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