「PCR抑制」日本が直面している本末転倒な現実

山梨大学学長「不十分な検査体制は日本の恥」

――政府は、緊急事態宣言を5月末まで延長しました。

いちばんの問題は、解除の数値目標がはっきりしなかったことです。PCR検査の陽性率や病床の占拠率など、どういう状況になったらいいのか? PCR検査という入り口を最初から絞り込んできたから、緊急事態解除に向けての検討材料になりうる陽性率などの重要な指標を見失ってしまったように思います。

今は緊急事態宣言を出して、「とにかく全員外に出るな」と要請していますが、それを続ければ、経済が死んでしまう。遅すぎるかもしれませんが、今からでも患者さんの正確な数を捕捉することが重要です。どんどん検査して、患者を見つけて隔離する。その方法しかないと思います。

「大学経営者としては最悪です」

――今からでも検査を徹底するにしても、実施数を先進国並みにするには何が必要でしょうか。

医師会の皆さんがPCR検査をやり始めていますけど、あれで十分かどうか。医師会の人たちだって怖いんです。個人事業ですし、自分が感染したら終わりなんですよ。非常に慎重にならざるをえない。

この状況を打開するのは、大学だと思っています。地域でいちばん医療資源があるのは、やはり大学病院なんです。検査部が充実している大学ならどんどん検査できる。そう考え、山梨大学医学部附属病院では、専用病棟を設けるなど新型コロナ患者の入院できる態勢を整えてきました。外来についても、山梨県や県医師会と連携して、ドライブスルーのPCR検査を始めました。

山梨大学医学部附属病院で行われているドライブスルー方式のPCR検査(写真:山梨大学)

ただ、大学の経営者としては最悪なことをやっています。病棟を1つ閉め、手術を絞り、そうやって捻出した人員をコロナ対策に充てている。収入もものすごい勢いで減っていますし、支出はどんどん出ていく。山梨県から補正予算で出してもらっていますが、その額ではとても追いつかない。それでも、大学の経営的な損失と人の命、どっちが大事なのか、という思いでやってきました。

しかし、厚労省や文科省が「われわれが補償します」といっさい言わない現状では、他の大学は踏み切れないでしょう。大学のリソースを活用して、日本全体で乗り切っていこうという機運が生まれないといけない。そう考えて、踏ん張っているところです。

取材:当銘寿夫(とうめ・ひさお)=「フロントラインプレス(Frontline Press)」

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