「PCR抑制」日本が直面している本末転倒な現実

山梨大学学長「不十分な検査体制は日本の恥」

――「PCR検査を拡大すると、医療崩壊を起こす」という意見がありました。今もその指摘は残っています。これについては?

検査を絞るための、後付けの言い訳ですよね。感染症では隔離がいちばん大事。どんどん検査して、陽性者を見つける。軽症者や無発症者にはホテルや公共施設に入ってもらい、看護師や医師のモニターを受けながら、陰性になるまで待ってもらう。病院のベッドは重症者のために空けておく。これが原則です。

日本でも法律を弾力的に運用して、本気になって施設を確保しておけば、最初からそれができたはずなんです。「医療崩壊」という言葉で国民を脅かしたのは、実はそういう作業をやりたくなかったためじゃないか、と思います。最近ようやくですが、ホテルでの受け入れも始めていますから、PCR検査を拡大しても医療崩壊が起きるなんてことはありません。

山梨大学の島田真路学長。山梨医科大学教授、山梨大学医学部教授、山梨大学医学部附属病院長などを経て2015年度から現職。2002〜2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の際、山梨大学医学部附属病院の感染対策委員長を務めた(写真:山梨大学提供)

――なぜそこまでして、検査を抑制したのでしょうか?

4月に迫っていた中国国家主席の習近平氏来日と、7月に予定していた東京五輪。政府はこれらを優先したんでしょう。本当の原因はそこにあったと私は思います。東京五輪をやるためには、日本で感染者が増えていちゃいけないわけだから、PCR検査数を抑えた。日本にはコロナウイルス拡大はないことにして……。「クルーズ船の患者は別カウントだ」とも言っていました。そうした当初の制限が効きすぎて、保健所の方々の心理に、検査を抑制することが刷り込まれたと思います。それが東京五輪の延期などが決まった後でも、検査数が伸びない大きな原因です。

「37.5℃以上が4日以上基準」削除の重要な意味

――厚生労働省は当初、検査実施の目安を「37.5℃以上の発熱が4日以上続いた場合」としていました。ここに来て、それを削除しました。

「厳しすぎる条件」だったということの表れです。「PCR検査は重症者しか受けさせないぞ」という強い意思が働いていたということです。

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