コロナ対策「一所懸命やってる」がチグハグな訳

多くの人が冷静さを失いパニックに陥っている

パニックとどう対峙するかが重要だ(撮影:今井 康一)

先日、神戸大学の岩田健太郎教授がYouTubeにアップした抗議動画が話題を呼んだ。

新型コロナウイルスの集団感染が起きた大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染対策を、内部に入った人間としての立場から痛烈に批判したものだ。

1日で追い出されたと話していたが、そこで見た真実を伝えた功績は決して小さいものではなかったと感じている。

結果的には賛否両論が巻き起こり、すでに削除されてしまったようでもあるが、われわれのような一般人にも非常に説得力のある内容ではあったからだ。

ところで岩田氏は、いまから5年半近く前の2014年11月に、『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)を上梓している。

タイトルからも想像がつくように、テーマは「パニック」だ。

感染症が流行した際には、必然的にパニックが起こるもの。したがってパニックと対峙し、パニックによる被害拡大を防ぐためのコミュニケーション(=リスク・コミュニケーション)をとることが重要な意味を持つということを訴えているのである。

今回、同書の緊急重版が決まり、「はじめに」と第1章(1)が全文公開された。そこでここでは「はじめに」に着目し、いまの時期だからこそ意識しておくべきことをまとめてみたい。

抗議のバックグラウンドにあるもの

まず気になるのは、なぜ、そこまでリスク・コミュニケーションの重要性を訴えるのかということではないだろうか。端的にいえば、その答えは岩田氏のキャリアのなかにある。

というのも2001年のアメリカでは9・11の同時多発テロのあとに起きた「炭疽菌によるバイオテロ」対策に関与し、次いで2003年には中国・北京で「SARS(重症急性呼吸器症候群)」にも従事。さらに2009年には神戸市で見つかった「新型インフルエンザ」症例の対策にも関わっているのである。

今回、「ダイヤモンド・プリンセス号」に乗り込んだことの裏側には、そのようなバックグラウンドがあったのだ。

次ページいずれも共通していたのは「パニック」だった
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