医療従事者の間で、リスク・コミュニケーションという用語はとても有名で、誰もがその重要性を口にするのだという。
ところが、医療の現場で効果的なコミュニケーションはとられていないのだそうだ。リスク・コミュニケーションに関する文献やプレゼンテーションを見ても、「ポイント」を外しているような気がしてならないというのである。
なぜならそれらは、海外のリスク・コミュニケーションの資料や文献を、「そのまんま」直輸入しようとしているだけだから。岩田氏はそう指摘する。
人の心に届くメッセージを
海外の教科書を引用したり、専門家の「分析」や用語の「分類」が並んだ文献を読んだり、プレゼンテーションを聞いたりすれば、リスク・コミュニケーションという学問領域について「勉強」することはできるだろう。
だが、勉強と実際にやることは違う。にもかかわらず情報を呑み込んで、そのまま吐き出しているだけだから、結果に結びつかず、ただ「上滑り」してしまうだけの状態になっているというのである。
(『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』より)
たしかに一般的なコミュニケーションにおいても、重要なのは「人の心に届く」だ。言い換えれば、リスク・コミュニケーションはあくまでも、コミュニケーションの一形態にすぎないということ。
普通のコミュニケーションすらきちんとできていないのに、リスク・コミュニケーションだけはうまくいくということはありえないわけである。
日本人はあるカテゴリーについて、「やりました」で満足してしまう傾向があるのではないかと岩田氏は指摘する。
(『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』より)
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