新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の勢いが止まらない。
安倍晋三首相は、2月26日に開かれた政府の新型コロナウイルス対策本部で、この1〜2週間が感染拡大防止に極めて重要として、大規模なスポーツや文化イベントなどの今後2週間程度の中止か延期、もしくは規模の縮小を要請した。
これを受けて、ドーム球場でのコンサートが突如中止となったり、プロ野球のオープン戦や競馬が無観客開催となったり、東京ディズニーランドとディズニーシーなども休園を決めた。また、前日に策定された政府の基本方針が示され、専門家会議からは濃厚接触を避けるための立食パーティーや飲み会の自粛が呼びかけられたこともあって、飲食店では事前予約のキャンセルが相次ぎ、夜の繁華街も閑散としている。これはもはや、事実上の国家の非常事態といえる。
同時に、この風景は私がかつて取材したSARS(重症急性呼吸器症候群)が蔓延した2003年当時の台湾、香港、中国の街の様子と重なってきた。
クルーズ船の下船は正しかったのか
横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から乗客の下船がはじまった当時、これは感染拡大の可能性がある「ギャンブル」だと以前に書いた(『クルーズ船乗客下船、日本の新型肺炎対策の限界』)。その後、東京や千葉、栃木、徳島などで体調を崩した下船客が検査の結果、陽性であることが判明している。
徳島の場合は、下船後に公共交通機関を使って羽田空港から航空機で帰宅。四国にはじめてウイルスが持ち込まれたことになる。感染症は、隔離、封じ込めが重要とされるにもかかわらず、全国に感染者を広めるというまったく逆のことをしでかした。明らかなギャンブルの失敗だろう。
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