新型コロナウイルス感染症における対応をめぐって、日本政府のスピード感やその判断・施策などに対して違和感を抱いている人は少なくないはずだ。
たとえば4月5日に東京都の感染者数が1日当たりで過去最高の143人と発表されたが、この数字をそのまま鵜呑みにしている人がどれだけいるだろうか。
新型コロナウイルスへの感染が疑われるのに保健所や病院では取り合ってもらえず、なかなかPCR検査を受けさせてもらえなかったという具体的な話が、いくつも聞こえてきている。実際の感染者は発表されている統計よりもはるかに多いのではないか。一般の人だけでなく、専門家の中でもこうした見方をしているケースが少なくない。
政治不信に火をつけた政府の「責任回避」
日本の官僚、そしてその官僚を動かす政治家は、これまでも重大な危機に対して、積極的な対応を避け、リスクを先送りするスタイルを取り続けてきた。1990年代のバブル崩壊が典型的な例だ。結果として、1997年の山一證券破綻など金融機関の連鎖破綻を引き起こし、その後の日本経済の「失われた30年」のきっかけを作ってしまった。
今回のパンデミック(世界的な感染爆発)への対応でも、日本は最近になってやっと厚生労働省が無症状の患者を感染病棟から移すための指針を公表したものの、対応のスピードは鈍い。
日本がPCR検査を絞っているとは諸外国からも指摘されているが、日本政府は軽症の患者が医療機関に殺到することによって院内感染を引き起こすことなども含めた医療崩壊を防ぐため、というスタンスだと言われている。だが、アメリカの国務省は「日本がPCR検査をしない以上、感染の実態が不明であり、医療崩壊が起こる可能性が高い」との見解から、日本に滞在する自国民に対して帰国の準備に取り掛かるように勧めている。それほど国際的にも疑念は持たれている。
そもそも、これまでの官僚や政治家の対応を振り返ってみると、そこには常に「責任回避」の姿勢があったように思えてならない。日本のPCR検査体制の不備が指摘されると、加藤厚生労働大臣をはじめとして、官邸に近い政治評論家までもが「なぜ増えないのかわからない」と答える。感染拡大が始まって、すでに2カ月も経過している。わからなければ、調べて改善するのが政治家の仕事のはずなのに、だ。
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