年明けから4月末までの4カ月間、日本国内において新型コロナウイルスに関連する記事や動画などのネットコンテンツは、確認できるだけでも約43万件も生み出された。
5月9日に配信した「コロナ『ネット震撼させた』ニュースの見られ方」で報じたように、今回の新型コロナウイルス関連の情報拡散については2つの傾向がある。
ひとつは岩田健太郎氏の動画が象徴するように、個人の発信、とくに医師など専門家による発信がマスメディアの記事を大きく超えるほど、FacebookやTwitterにおける「シェア」「リツイート」「いいね」などの反応の量を示すエンゲージメントを得るケースが増えていることだ。
そしてもう1点が、芸能人・著名人の病状や死去のニュースが、データを積み上げる形の報道や解説よりもはるかに多くのエンゲージメントを得ていることだ。
これらの特徴から、何を読み取るべきか。そしてパンデミック下において、情報の発信/受信側は、それぞれどのようなことに気を付けるべきなのか。識者に聞いた。
何が報じられて「いないか」が可視化される時代
外科医という立場からブログなどによる積極的な情報発信を行い、Twitterで6万人以上のフォロワーを抱える山本健人さん(@keiyou30)。データからは、いま一般の人の情報収集の方法やメディアへの視点が変わりつつあることが見て取れるという。
――新型コロナウイルス関連のネット上の情報拡散についてどうご覧になっていますか。
今回、専門家個人の発信を、一般の人が1次情報として収集できるようになった、というのは大きな事件といってよいと思います。
例えば、クラスター対策班の西浦博教授がTwitterアカウントで発信を始めると、あっという間にフォロワー数が10万人を超えましたし、クラスター対策班自体の公式アカウントも1カ月に満たないうちに40万人を超えました。これは裏を返せば、不安定な状況下で「1次情報を収集したい」というニーズがどれだけ高いかを示しているのかもしれません。
最前線の感染症内科医や感染管理・公衆衛生の専門家がSNSやnoteなどで発信をしている内容を見れば、テレビや新聞等のメディアでは得られない生の情報を得ることができます。
それらを比較検討することで、既存メディアで何が「報じられていないのか」という、これまでは知りえなかった実情を知ることができるようになりました。さらには、メディアによる1次情報の解釈と、最前線の専門家の解釈がどう違うのかを知ることもできるようになりました。これは情報の受け手側にとって、リテラシーを高めるうえでのメリットだと言ってよいでしょう。