岩田健太郎「よく走る人ほど風邪ひきやすい訳」 「免疫力UP」の誘い文句は疑ったほうがいい

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それではインチキでなく免疫力を上げる方法はないのかというと、一つだけあります(専門家であれば「他にもある」と反論するでしょうが、一般の方が知っておいたほうがいいのは「一つだけ」です)。それはワクチンです。

ワクチンは、特定の病原体に対する免疫力を高めて防御するもので、典型的なものは麻疹のワクチンです。

麻疹は普通の感染防御が全く通用しない、たいへん怖い感染症ですが、ワクチンはすごく効く。だからみんな麻疹に罹らなくて済んでいるんですね。

麻疹のウイルスは新型コロナウイルスなんかよりもはるかに感染力が強いですから、ワクチンがなかったら世界中麻疹だらけになって大変なことになっているわけで、我々が麻疹にならなくて済んでいるのは、ワクチンがあり、ちゃんと接種しているからなんです。

日本の感染症でいえば、日本脳炎も同様です。日本脳炎ウイルスは豚の中に生息していて、夏になると蚊を介して人間に感染します。じつは、豚の体内のウイルスを排除できないので、日本中、ウイルスだらけなんですよ。

でも日本脳炎って、今の日本ではめったに起きないですよね。それは子供の頃にちゃんと日本脳炎ワクチンを打ってるからなんです。

このようにワクチンは、我々は普段自覚はしないですけど、ちゃんと我々の体を守ってくれているんです。

調子が悪い=ただの疲労

「免疫力」は、目に見えないので、自覚できないものです。「お酒を飲み過ぎて肝臓の調子が悪い」とか「食い過ぎて胃の調子が悪い」とかは自覚できるけど、「いま免疫が弱ってる」みたいなことは自覚できない。体の調子が悪いときに「ちょっと免疫が落ちてるな」みたいに言っちゃうこともあるでしょうが、それは免疫とはまた無関係な、ただの疲労のことが多いですね。

それではワクチン以外では免疫は変わらないかというと、一過的に下がることはよくあります。例えばぼくはマラソンをしますが、一般的に、フルマラソンをした後は数週間、免疫が下がるといわれてます。だからフルマラソンの後は風邪をひきやすくなるんですね。

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