また、多くのシティホテルは本格的なバーやレストランを備えている。サービス・調理に熟練者を配することから、利用者が減ると固定費がかかる分、宿泊に特化したビジネスホテルよりもダメージが大きくなる。営業継続を続けても費用ばかりかかることから、休業に踏み切るホテルも増えてきた。
当面の焦点は資金繰りだが、手元資金の潤沢な帝国ホテルを除く多くのシティホテル運営会社は、1年以内に現金化できる流動資産がどの程度確保されているかを見る流動比率は、理想的とされる200%を割り込んでいる。
京都ホテルは2019年12月末時点で104.5%、ロイヤルホテルも同103.3%と、必要とされる100%をかろうじてクリアしているが、横浜市内で1927年開業の老舗ホテルを運営する「ホテル、ニューグランド」は2020年2月末時点で同32.3%と厳しい状況だ。
経営破綻するホテル運営会社も
非上場の大手でも、2019年9月末時点でニュー・オータニが同42.8%、ホテルオークラは同35.3%と同様の傾向がみられる。背景にあるのは、業界特有の商習慣だ。「日銭商売のため、毎日キャッシュが入ってくることを前提に、手元に現預金を確保しておく習慣がなかった。各社とも月商の1カ月分もあれば十分だと感じていたはず」(前出のシティホテル関係者)という。
シティホテルではないが、経営破綻するホテルも出始めた。東京商工リサーチの調べによると、東京都内などに約25のホテルを展開していたファーストキャビンが4月24日、東京地方裁判所に破産を申請した。4月27日には、関西や全国のリゾート地で宿泊特化型を中心に28ホテルを展開していたWBFホテル&リゾーツも、大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。
こうした事態に備え、金融機関といざというときの融資枠契約を結んでいないホテル企業も多く、各社は融資枠の確保などを急いでいる。R&Bホテルなどを運営するビジネスホテルチェーンのワシントンホテルは4月8日、三菱UFJ銀行と計30億円のコミットメントライン契約を締結。藤田観光は既存の融資枠220億円に加え、取引先銀行11行から5年超の資金220億円を借り入れることを決めた。
あるシティホテル幹部は「帝国ホテルのビル賃貸収入のように、安定収益源となる事業を持たないホテル運営会社は予断を許さない状況だ。倒産を防ぐべく、メインバンクと融資枠の調整を進めている」と鬼気迫る様子で語る。
長らく160万室弱で推移していた国内の旅館・ホテル客室数は、訪日客の増加とともに2018年度に約164万室へと拡大していた。だが、新型コロナウイルスの流行により、ホテル運営会社が生き残るための焦点は訪日客の奪い合いから一転、資金繰りに向けられている。
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