4月下旬の東京・日比谷。1890年創業の名門ホテル「帝国ホテル 東京」は、普段であれば訪日外国人やパーティの参加者、結婚式を控えたカップルらでにぎわう。
しかし、ロビーからは人影が消え、品のよいBGMだけがむなしく響く。あるスタッフは「ここ数週間はご覧のとおり、陸の孤島のようです」と表情を曇らせる。
パーティや婚礼は「ほぼすべて中止」
4月7日に発令された緊急事態宣言を受け、帝国ホテルでは4月9日から5月6日まで、フランス料理レストラン「レ セゾン」以外の館内レストラン・バー16店舗を休業している。企業のパーティや婚礼などの宴会も「ほぼすべてが中止か延期」(広報担当者)。帝国ホテルの売り上げは宴会・レストラン部門が約55%を占めており、売り上げが半減することになる。
売り上げの約20%を占め、931室ある宿泊部門も、感染拡大リスクを低減させるために「最小限の受け入れ態勢に抑え、かなりの数のスタッフを休ませている」(同)。そのため、受け入れは新型コロナウイルスの感染が広がる前からの予約客や長期滞在客に限定し、新規の予約は原則受け付けていない。「具体的には答えられないが、客室稼働率は今までにないほど低い」(同)という。
厳しいのは帝国ホテルだけではない。全国241ホテルが加盟する全日本シティホテル連盟によると、2020年3月の全国平均客室利用率は32.2%と、前年比で52.7%ポイントも減少した(調査協力は136ホテル)。中でも2019年からホテルの供給過剰が指摘されていた近畿地方は同22.2%と低迷し、大阪府内のホテルに至っては同14.9%と同72.8%ポイントの大幅減を記録している。
シティホテルは、宴会場やレストランなど、宿泊以外の複数の機能を備えたホテルのことだ。シティホテルに新型コロナウイルスの影響が出始めたのは2月のことだった。訪日外国人観光客の5割近くを占める中国と韓国からの訪日客が、2019年の143万9421人から2020年は23万1100人へ大きく減少したことが響いた。
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