スマートフォンでアプリを起動すると、カメラを通して映し出された部屋の風景の中に、スニーカーなどたくさんの“商品”が浮かび上がる。近づくと商品の説明や購入者のレビューが表示され、画面越しに指で触れると、カートに入れることもできる――。
新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛要請が続く中、AR(拡張現実)技術を用いた買い物体験の創出に乗り出す事業者が増えている。
食品や日用品、書籍などはアマゾン、楽天のような従来型のネット通販(EC)で事足りる場合が多い。一方でファッション、インテリアといった、デザインや質感を細かく確認しながら購入を検討したい商材は、写真と文字だけの情報ではどうしても買いづらい。そんな中で、スマホ画面上ではあるものの、商品を本物に近い立体的な形で表現できる技術としてARが注目され始めている。
重視したのはエンタメ性
ZEPPELIN(ツェッペリン)も、そんなARとECを掛け合わせたサービスを開発する1社だ。これまでは屋外広告やイベントでのAR活用をプロデュースしてきたが、そこで培ったノウハウを搭載したARマーケット事業「ARaddin(アラジン)」を5月初旬に開始する。まずは対象地域や人数を限定したスモールスタートを予定。同事業の業務提携先にはKDDI、電通デジタルも名を連ねる。
アラジンのシステムは、アップルが提供する「ARKit」、グーグルが提供する「ARCore」をベースに作っている。AR空間上に並ぶ商品をそのまま購入できる技術は自社で開発した。 空間をソフトウェアが自動で判別するKDDIの「都市3Dマップ」技術も活用しており、室内に大小さまざまなサイズのオブジェクト(キャラクターなど)が自由に動き回る表現を可能にした。 ユーザーがスマホ上でオブジェクトに触ったり、オブジェクトが音を発したりといった、実世界に近い体験もできる。
「生活必需品が便利に買える・届くというだけでなく、自宅でも外出時のように楽しんで買い物ができるよう、エンタメ性を重視している」。サービスの企画やマーケティングを担当したツェッペリンの大島伊雄氏はそう話す。アラジンでは商品拡充に向け小売企業などの提携先を募っているが、普段はスタジアムでグッズ販売を行っているプロスポーツチームや、いちご狩りの来訪者が急減している農家などの取り込みも模索しているという。
”エンタメ性”は商品以外の面でも追求していく。アプリ上には商品とともにオリジナルのキャラクターが登場し、商品の基本情報やユーザーレビューをナビゲートしてくれる機能を設けることを構想する。また配送時には、受け取った荷物にスマホをかざすことでARを用いた演出が発動するなどの工夫を施す予定だ。
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