自宅を店頭に!「ARお買い物」の希望と課題  各社が続々機能拡充、リアルを代替できるか

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AR技術に着目するのは新規参入組ばかりではない。アマゾンは2019年5月、化粧品の色味などを画面上で試せる「バーチャルメイク」機能をスマホ向けのECサイトとアプリに投入した。AI(人工知能)で商品の色などを分析し、ARによって実際にメイクをしたような仕上がりを確認できるものだ。

ユーザーはスマホのカメラを利用したライブ動画や自撮り写真のほか、アマゾン側でストックされているモデルの写真を用いて色味や質感を試すこともできる。現在は資生堂、コーセー、カネボウなど5つの化粧品メーカー、約20ブランドの対象カテゴリーの商品で利用できるが、徐々に範囲を拡大したい考えだ。

家具ECの「LOWYA(ロウヤ)」には、商品を部屋の中に”試し置き”できるAR機能がある(写真:ベガコーポレーション)

家具・インテリアのECで国内大手の「LOWYA(ロウヤ)」を運営するベガコーポレーションも2019年2月、商品を3Dモデル化し、部屋にレイアウトできる機能「LOWYAハイビジョンAR」をサイト内で公開した。スマホのカメラで自分の部屋を映しながら、実際に家具を置きたい場所に3Dモデルを出現させることができる。

さらに同8月には、この機能を発展させたVR(仮想現実)でのコーディネート提案機能「LOWYA360(サンロクマル)」も開始。スマホ、タブレット、パソコンで利用できるほか、VR専用のヘッドセットからアクセスすれば、実空間に近いイメージで仮想の室内を歩き回って商品を確認することも可能だ。

課題は一般ユーザーへの認知  

家具は比較的高額な買い物であるうえ、自分の部屋の置きたい場所にサイズが合うかの確認も必要であるため、AR・VRとは親和性が高い商材といえる。ただ、ベガコーポがこうした機能を拡充する中では、AR・VRならではの課題も明らかになってきたという。

まずはこの技術自体の一般への浸透率がまだ低いことだ。「現状では一部のアーリーアダプター(新しい技術やトレンドに敏感な層)に使ってもらっているにすぎず、これら機能のおかげで購入数が伸びるなどの明確な効果が出ているとはいえない」。ベガコーポの浮城智和社長はそう話す。

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デバイス(端末)のスペックや、データ量のコントロールにも難がある。「ユーザーが実際で部屋で見る風景に近づけようと、窓から差し込む光の家具への当たり方など細かい部分までこだわって開発を進めているが、そうするとデータ量が膨大になる。今のスマホアプリにフルで実装するとなると、反応速度が遅くなったり、落ちたりする恐れがある」(浮城社長)。

ベガコーポでは現在、ロウヤで扱うものの約4割に当たる1300商品で3D対応を完了している。が、撮影・データ化といった作業はすべて自社内で行っているため、負担は小さくない。「ゆくゆくは全商品を3D化したいが、今それだけのコストをかけるかは悩みどころ」(浮城社長)。AR・VRがECの新定番となるには、まだ時間がかかりそうだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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