シティホテル、婚礼・パーティ「ほぼ全滅」の苦境 外出自粛要請を機に一変、カギは資金繰り

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ただ、訪日外国人の動きとは対照的に、2月までは日本人の国内旅行需要に大きな変化はなかった。2019年の訪日外国人による旅行消費額は4.8兆円なのに対し、日本人のそれは21.9兆円と大きい。そのためもあってか、全日本シティホテル連盟が調査した2020年2月の全国平均客室利用率も69.6%と、前年比で12.8ポイントの減少にとどまっていた。

状況が一変したのは、2月26日に安倍晋三首相が大型イベントなどの自粛を要請してからだ。関東のあるシティホテル幹部は「安倍さんの一声を機に危機意識が高まり、3月に頼みの国内客がどっと減ってしまった」と漏らす。

客室利用率は史上最低水準に

3月は例年なら春休みや花見の観光需要で盛り上がるはずだった。企業によるテレワーク推進や出張自粛も響いた。同連盟の粉川季雄専務理事は「リーマンショックや東日本大震災の時でも、稼働率(客室利用率)は50%から60%台までしか落ちなかった。(2020年3月に記録した客室利用率32.2%は)史上最低水準だろう」と危機感を募らせる。

宿泊に特化しているビジネスホテルに対し、シティホテルでは宴会部門の売り上げが宿泊部門と同等かそれ以上を占める。パーティは自粛要請の対象である「大型イベント」そのものだったことから宿泊以上に需要が落ち込み、シティホテルはより深刻な打撃を受けた。

京都ホテルオークラなどを運営する京都ホテルの西川治彦取締役経理部長は「例年、3月は年度末の送別会など、月内に予約・実施される宴会もある需要期だが、京都ホテルオークラの宴会収入は前年比で10%まで落ち込んだ」と振り返る。

大阪市内でリーガロイヤルホテルなどを運営するロイヤルホテルでも「3月は宴会をキャンセルする電話が鳴りやまなかった。本当に厳しかった」(同社のIR担当)という。

4月に入ると、週末の外出自粛要請や緊急事態宣言などで、ホテル業界を取り巻く環境は一層厳しさを増した。あるシティホテル関係者は「4月の客室稼働率はかろうじて2桁。売り上げは宴会、宿泊、料飲の全部門が前年比9割減となった。バブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災と幾度もつらい時期を経験してきたが、未曾有の体験だ」と衝撃を隠せない。

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