リモートワークで必須になる意識改革とスキル 業務の指示や関わり方を変えるチャンスだ

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また、日本人特有の察するコミュニケーションの崩壊が起こっています。

長い時間、同じ場所にいて、相手の動きや醸し出す雰囲気、口調などを見聞きすることによって、「今、話してもいいかな」とかタイミングを計ったり、「今日はこれを言うのはまずそうだな」と判断したりしながら、微妙にやり取りの方法を調整しています。さらには、「ほら、あの件、適当に任せるよ」といったような曖昧表現をすることも多く、それを適宜、解釈しながらやり取りを行うといったことは日常茶飯事です。

しかし、リモートワークになれば、相手の動向を読めません。しかも文字ツールでの限られた情報や、短い時間でのやりとりになると、さらに推測するのは難しくなります。やりとりも「ほら、あれ」というわけにはいきません。

例えば、「先週打ち合わせた◯◯会社さんの件、提案の概要を、A4、1枚程度に明日午前中までにまとめて」といったように、具体的にもれなく内容を盛り込む必要があります。さらに、希望があれば、どのような体裁にしてほしいのかなどをより具体的に伝える必要があります。伝える側は、伝えたい意思をはっきりさせ、詳細にイメージして指示しなければならないわけです。

また、メールなどで「後で頼む」という指示を受け、今取り掛かっていることが終わってから処理しようとしてたら、「まだ?」と催促されて腹が立つなどということも頻繁に起こっています。さらに、一方的に進捗を尋ねられるので、作業が進まずにイライラするなどを訴える方もいます。見えないからこそ起こることと思いがちですが、実際には、リモートでなくとも同様のことは起こります。

行き違いのないコミュニケーションへ転換するチャンス

リモートワークは、空気を読むといったコミュニケーションから離脱するチャンスととらえていただければと思います。曖昧な表現を使い、察するコミュニケーションは、奥ゆかしく、一見、相手を思いやるようなイメージですが、実際は違います。思い込みや、勘違いが起こりやすく、猜疑心を生みやすいのです。

相手とのやり取りは、「具体的に言わなければ通じない」「確かめなければわからない」ということを心に留め、行き違いのないコミュニケーションへの転換が必要です。人間関係トラブルは、この行き違いが起こすことが多く、それが心身の不調につながることも多くあります。

こちらがはっきりとものを言わないでいて、察しない相手が悪いというのは、傲慢以外の何者でもありません。それを今までは、疑問も持たずに平然と行っていたかもしれませんが、これを機会に、より具体的なやり取りを行っていただければと思います。一方通行ではなく、相手の意向や理解度を確認するといった相互のやり取りを徹底することで、リモートワークの有効性や将来性を見いだせることと思います。

また、通常の業務に戻った折に、さらに社内コミュニケーションの精度が上がり、生産性を上げることはもとより、トラブルやミスの回避にもつながります。今の状況を前向きに活用して、是非、風通しのよい職場づくりを目指してください。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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