つまり、今後もクラスターなどの発生で患者数が局地的に増えていく地域ほど、テレワークへの移行が一気に進んでいくことが推測される。また、業界別には情報通信業が実施率26.1%と高く、学術研究・専門・技術サービス業が20.3%と続く。逆に低い業界は、運輸業・郵便業(5.8%)、医療・介護・福祉業(4.6%)だ。こうした業種の地域分布の違いもランキングの結果には反映されている。
こうした急ごしらえのテレワークが急増する中で、各企業・各職場では、テレワークによって生まれる「格差」がすでに表面化している。ここでは「企業間格差」「職業間格差」「個人間格差」の3つの格差を整理して取り上げたい。
まず、企業間格差。以前からテレワークは企業規模別での普及格差が大きい働き方だ。上述したパーソル総合研究所の調査でも、テレワーク実施率は100人未満の企業で7.7%、1万人以上で22.0%と大きな差が出ている。
「調整が大変で導入せず」という企業は少なくない
テレワークを実施していない会社の社員にその理由を聞くと、「テレワーク制度が整備されていない」が41.1%で、「テレワークのためのICT環境(機器、システム)が整備されていない」の17.5%よりもはるかに多い。つまり、そもそもテレワークできない業務であることを除けば、PCやネットワークなどの「技術環境」よりも、人事制度・就業規則の整備が遅れている企業が多いことがわかる。
「ICTツールへの予算がない」といった経済的な要因のみならず、こうした緊急事態にフレキシブルに対応できる企業かどうか――。いってみれば各社の経営・人事の「反射神経」や「以前からの準備」の差が如実に表れたということだ。こうした企業間格差は今後もテレワークが進めば進むほど、大きくなっていくだろう。
一方で新しい形の格差も起こっている。それが「職業間格差」だ。当然のことながらテレワークにはできる職種とできない職種がある。飲食・小売店舗・エンターテインメントなど、業務そのものがストップしてしまう仕事も多く、それに紐付いているさまざまな案件が中止・キャンセルを余儀なくされているのは周知の通りだ。
また、職業間格差には、雇用形態も関連する。派遣社員など就業場所が契約時に定められている人は、テレワークへの移行がスムーズにいかない場合もある。これから決算作業が立て込む、管理部門の事務職はオフィスに誰かしらいないと業務処理が事実上できないことも多い。
こうした職種の格差を、可能な部分から速やかに解消しつつ、事後的な補填や、補償のあり方も検討したい。特別対応によってオンラインや遠隔での処理可能な体制構築、賃金補填の方針を提示し、テレワークが職種間の不平等感を生まないよう、各所で対応が求められる。「調整が大変だから」といった後ろ向きの意識も一部で見られるが、現在の先の見えない脅威に対しては緊張感が足りないと言わざるをえない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら