「役に立つ力」ばかり研ぎ澄ます日本企業の盲点

山口周×水野学「今必要とされる価値は何か」

山口周氏(写真左)と水野学氏(同右)が考える本当の「価値」とは?(写真提供:朝日新聞出版)
「くまモン」「相鉄」などを手がける、日本を代表するクリエイティブ・ディレクターの水野学氏。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』など多くベストセラーを執筆した著述家の山口周氏。
いま最も注目される二人が「今の社会で何が価値になるのか?」をテーマに対談した共著『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』を上梓した。同書でビジネスとクリエイティブを繋げた発想法や働き方について語り合っている。前回記事に続き、本の一部を抜粋・再構成して紹介する。
前回記事:日本の会社は「過剰は無価値」とわかっていない

文化は文明を後追いする

山口:日本のメーカーのほとんどには、世の中にある「顕在化している問題」を見つけてきて、それに対するソリューションとして便利なものをつくって成長してきた、という「強烈な成功体験」があります。

パナソニックなんかはその象徴だと思います。松下幸之助が唱えた「水道哲学」という戦略は大量生産が前提になっているわけですが、これはマズローの欲求5段階説の下層にある問題にアドレスすることで初めて実現できます。なぜなら生理的欲求は普遍的だからですね。「冷たい水で手がかじかむのはつらい」「ぬるいビールはまずい」というのは普遍的な不満です。

普遍的というのは「市場規模が大きい」わけですから、数をたくさんつくることができる。だから非常に水道哲学と相性がいいわけです。

しかし、「過剰に供給されるものの価値は低下する」わけですから、現在は「便利さ」の価値が下がってきている。昭和とは「価値の構造」が変わってきているのに、「価値の認識」が変わらないままになっています。すでに価値のなくなっているものをかつてと同じように追求していれば収益が出なくなるのは当たり前のことです。

これは「成功体験」がもたらす誤謬ですね。もうすでに価値のなくなっているモノやコトを、昔の体験に基づいていまだに「価値がある」と思っているわけですから学習が足りないと言えます。

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