「役に立つ力」ばかり研ぎ澄ます日本企業の盲点 山口周×水野学「今必要とされる価値は何か」
水野:それでBtoBという市場にいっちゃうわけですね。
山口:そうやって「役に立つ」ばかりを追求していると、ビジネスがすごくアスリート的になりますね。
アスリート的ビジネスの特徴は「パフォーマンスを測る軸がシンプルで計量可能である」ということです。ICチップなら計算能力とコスト、発電機なら発電効率とコスト、自動車なら燃費と価格ですね。こうなると「1位総取り」になります。わかりやすい例が100メートルスプリンターですよ。アスリート中のアスリートなわけです。「誰が1位か?」と問われれば「ウサイン・ボルト」となる。みんな知っているわけですね。
では「誰が3位か?」と問われれば誰もわからない。そもそも「知るわけないだろ」という反応でしょうね。
でも「世界で3位」なんですよ? どう考えてもスゴいことなのに誰も記憶していない。つまりアスリートの世界では極端な「栄光の上位寡占」が起きるということです。「役に立つ」の世界はアスリート型になるので上位に入れるか入れないかで極端な報酬の格差が生まれます。
「役に立つ」だけでは1位になれないグローバルビジネス
水野:なるほど。しかも、インフラのようなドメスティックな業種であれば、役に立つだけで国内ナンバーワン企業としてやっていけますが、グローバルビジネスだとそうはいかないですね。
例えばSNSも、かつて日本のナンバーワンだったのはミクシィですが、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムと次々入ってきて、その後なくなったわけじゃないけれど……。
山口:事実上、存在感がなくなった。
水野:はい。ミクシィはその後違うビジネスを展開していきましたが、あれと同じことが、まだまだ起きていくということですね。今のメルカリはヤフーや楽天と比べれば、フリマ事業はすごく元気ですが、仮にAmazonやGoogleがフリマ機能に参入したら、業界地図はどうなっていくか。
山口:Googleは「役に立つ」のトップランナーですからね。Googleのシェアは世界中で90%を超えてしまった。要するに世界の一強です。
水野:網業界のウサイン・ボルト状態ですね(笑)。乱立していた日本国内のQRコード決済も、ヤフー(PayPay)とLINE(LINE Pay)の統合でだいぶ整理がつきましたね。やはり、1位が強い。
(次回に続く)
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