日本の会社は「過剰は無価値」とわかっていない 水野学×山口周「これからの会社の価値」
未来の会社がつくっていく「価値」とは?
水野学(以下、水野):僕は一般には、NTTドコモの「iD」であるとか、熊本県のキャラクター「くまモン」であるとか、デザインやブランディングの仕事で知っていただくことが多いかもしれません。
でも、実はデザインを含めたコンサルティングのような形で、企業やメーカーと関わることが多いのです。最近でいうと相鉄グループのブランドアッププロジェクトとか。
そこで自分の中でも、これから日本企業はどうなっていくかというのは、よく考えているんです。
例えば、よくも悪くも「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた頃の日本の力は失われていて、GDP(国内総生産)では2位の中国に大きく水をあけられ、2019年国際競争力ランキング(世界経済フォーラム)でも前年の5位から後退し日本は6位。大手メーカーはどこも、目に見えて世界で戦えなくなってきている。この状況で、企業はどうしたらいいのでしょうか。
山口周(以下、山口):僕は20代の頃からずっと「会社が生み出している価値とはそもそも何だろう?」ということを考えています。
わかりやすく言えば、企業が社会に対して何か価値を提供できれば、その価値に対する対価がもらえるというのがビジネスの仕組みじゃないですか。だから企業の調子が悪くなるということは、その会社が「世の中に対して価値を提供できなくなっている」ということですよね。価値を提供できなくなるので対価も得られない。
水野:「僕たちがとってきたマンモスの肉をあげるから、君たちが持っている木の実をもらう!」って頃から連綿と続いているビジネスのルールですね。
もちろん、お腹を満たすという価値を持つ「マンモスの肉」から考えたら、提供する価値はだいぶ複雑になっていますけれど。