日本の会社は「過剰は無価値」とわかっていない

水野学×山口周「これからの会社の価値」

水野:なるほど。利便性が過剰になりすぎるあまり、逆に不便なものの価値が高まっている。

便利が過剰になると今度は文明の否定が始まる

山口:そうです。とくに20世紀に入るとエレクトロニクスとコンピューターが劇的に発展して、日常生活に存在する「生理的欲求」と「安全欲求」をことごとく満たしていきました。 

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おかげで「毎日お風呂に入れる」とか「家の中で暖まれる」とか「食べ物が安全に保存できる」とか「雨にぬれずに移動できる」ようになる。とにかく日常にあるいろいろな不便を解消し、問題を解決するためにテクノロジーや文明を使ってきたわけです。

その結果、今は便利が過剰になり、「一戸建てを建てるなら、むしろ不便な薪ストーブを入れたい」とか「白湯を沸かすなら鉄瓶のほうが、風情があっていい」という、不便を求める発想が出てきました。

ビンテージカーの値段が上がっているのも同じ現象ですね。1970年代に製造された空冷のナローポルシェの中古車価格はすでに新車のポルシェの数倍になっています。これも薪ストーブ同様、ある意味で文明の否定ですし、エンジニアからすると信じがたい話ですが、珍しい話ではなくなっています。

例えば同じ自動車の例で言うと、ジャガーが1960年代の名車の復刻版として販売した「E-TYPE REBORN」の価格は日本円で2億円を超えていましたけど即日で完売していますしね。

(次回に続く)

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