プロ野球選手は「クビ」にどれだけ備えているか 現役時代から準備し、引退後に即動けるかがカギ

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:一般的にイメージされる大手証券会社ではなかったので、アットホームな感じで続けることができました。仕事は場立ちといって体力勝負みたいなところもありましたからね。上下関係や人との付き合いは野球界で鍛えられていましたから、そこも続けられた要因かもしれないですね。

奥村:僕は会計の仕事をしているので、日々数字を扱います。証券会社も、数字の世界だと思います。スポーツって数字とめちゃくちゃ向き合うので、意外にスポーツ選手と数字っていうのは親和性あるんじゃないかと思っています。

:確かに、営業成績とかは数字で出ますからね。活動の成果が数字として現れるという意味では、スポーツと同じと言えるかもしれません。

高森:逆に、ここは苦労したな、という部分はどこですか?

奥村:一般企業に勤めているときに感じたのは、「横並び意識」でしょうか。プロのときは、やったらやっただけ評価されましたけど、企業に入ると、めちゃくちゃ頑張っている人とそうでない人が同じ給与テーブルで評価をされたりする。長期的に見れば評価されますけど、短期的にみると同じ。それはちょっとストレスに感じる部分はありましたね。

高森:森さんと奥村さんは、現在セカンドキャリアの支援をする立場上、多くのアスリートと触れる機会があると思います。そんな中で、彼らの多くが持つ悩みというのはどんなものなんですか?

奥村:やはり、「何をしたらいいか」という悩みですね。

:もう、それが圧倒的。

高森:水野さんも、同じ悩みを持ったと思うんですが、引退してわずか5カ月で「起業」を選んだ背景には何が?

水野:高森さんに出会って話をしたこともそうですし、北海道の地震のこともあって、早く世の中のためになりたいという気持ちが強かったです。

奥村:クラウドファンディングの事業を、すでにやっている会社もありますよね? そこに勤めてから、という考えではなく、なぜ起業を真っ先に?

水野:今お話ししていたように、勤めるとどうしても「限度」があるんじゃないかなって。それが僕にはちょっと向いていないかなって思ったんです。思いっきりやって、ダメだったら仕方ない。だから、チャレンジするほうを選びました。

昨年まで横浜DeNAベイスターズの投手で、今年からクラウドファンディング事業の会社を起業した水野滉也氏(撮影:梅谷秀司)

奥村:なるほど。引退後に一般企業に就職することを希望する選手も増えてきているのは事実ですね。2、3年前から、そこを希望する選手の割合が増えてきています(※2019年度は15.1%で、2位の大学・社会人野球の指導者12.3%を抑えて1位)。そのあたり、最近の選手は安定を求める傾向にあるのかと思いますが、実際のところは?

水野:やはり、結婚して家庭を持っている選手は自然と安定を求める傾向にあるかもしれません。僕は独身ですし守るものもありませんから勝負に出られますけど、そこは人それぞれといったところでしょうか。

野球の夢はいつまで見るか?

高森:ちょっと話はそれるんですけど、野球の夢って、まだ見ますか?

奥村:たまに見ますね。しかも、高校時代の(笑)。岐阜県大会の決勝で、石原(広島)に詰まりながらレフトスタンドまで持っていかれた映像。会計士の試験に受かったあたりからあんまり見なくなったので、そのあたりで野球から解放されたのかも。

:僕は現場によくいるから、結構見るかな。普段から選手の動きとか見て、いろいろ考えることもありますしね。

水野:僕は、最近とくによく見ます。

一同:へー!

水野:夢の中では投げられているんですけど、夢の中でもやっぱり痛い。それで、痛くて目が覚めるんです。

高森:それは、かなり長い間見そうな夢ですね(笑)。実際、ケガさえなければもっとやれたっていう思いは?

水野:ないことはないです。でも、意外とキッパリ、「ダメなものはダメ」という感じですね。

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