イノベーター理論でみるファッショントレンド

マジョリティがトレンドを受け入れられないワケ

なぜなら、そこに見えない溝があるからです。今度は、ジェフリー・A・ムーア氏の唱える「キャズム理論」を用いて説明したいと思います。簡単に言うと、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には、目に見えない大きな溝(隔たり)があり、トレンドがマジョリティに到達するには、その溝を何らかの形で埋める必要があります。

注:イノベーター理論やキャズムについては多くの書籍や解説がありますから、ここでは専門的な説明は割愛させていただきます。 

では、そこにキャズム(溝)が存在するのならば、いったい何が原因なのでしょう?

ファッショントレンドのキャズム、2つの要因
 ■値段の高さ
 ■デザインの奇抜さ

 

細かいことを言いだすときりがありませんが、そこはいったんさておき、大きな要因を2つだけ挙げます。端的に言うと、ひとつは値段です。そして、もうひとつは、デザインです。

ひとつ目の値段というのは、つまり金額的に手が届かないということです。そもそも高級ブランドのコレクションはとてもすてきで、手に入れたいと思う人々の願望はいくらでもあります。ですが、一般的な価格とは懸け離れています。そして、容易に手に入らないことで、人々のあこがれがますます募り、羨望の的になります。そして、手に入れた人は優越感に浸ることができます。これは、以前、ファッションが貴族や特権階級の人たちのものだった時代の名残です。

もうひとつのデザインというのは、服が奇抜で、誰にでも着ることができるものではないということです。繰り返しになりますが、ファッションショーの服は大抵とんがっていて、モードと呼ばれるものは一般的でも大衆的でもありません。マジョリティに受け入れられるまでには、角をとり、かみ砕いて説明する必要があるのです。

このことについてもう少し補足すると、“モードな服”というのは、極端に言えば、アートです。小難しい理論などはいっさい必要ありませし、難しいことは何もないのですが、とは言え、理解するにはそれなりの感性が必要です。これを、センスと呼びます。この最先端のモードと、一般的なアパレルの違いを音楽にたとえて言うなら、ピアニストが演奏する超絶技巧のリストの楽譜と、ピアノ初心者が弾くバイエルの楽譜ほどの違い、と言えば想像がつくでしょうか。初心者のためには、難しい楽譜を簡単なコードに書き換える必要があります。それと同じように、ファッションもマジョリティに向けるのであれば、凝ったデザインをなくし、より多くの人が抵抗感を持たない服にする必要があります。そうやってコードが書き換えられるうちに、服はオリジナリティを失い、ベーシックで面白みのないものになっていきます。

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