イノベーター理論でみるファッショントレンド マジョリティがトレンドを受け入れられないワケ

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アーリーマジョリティとレイトマジョリティへの対策

一口でマジョリティと言っても、アーリーマジョリティとレイトマジョリティでは、基本的な傾向と対策が変わります。この2つを比較すると、アーリーマジョリティのほうがまだ少しトレンドに敏感ですから、アーリーマジョリティ向けには少しトレンド感を残して、価格を適切にすることが重要です。一方、レイトマジョリティのほうは、トレンドにはそこまで反応しませんので、デザインはよりベーシックでわかりやすくする必要があります。かつ、価格にとてもシビアですから、そのあたりを十分に考慮する必要があります。

さて、ここまではモノの視点で、マジョリティに向けたマーケットの浸透に伴うトレンドの変化をみてきました。では、メディアのトレンドの伝え方はどうでしょうか。

雑誌を例に考えてみますと、こちらも媒体のポジショニングによってさまざまです。ポジショニングがより左(クリエイティブ)に位置するモード誌などは、ファッション言語能力の高い読者をターゲットにしますから、コレクション素材をそのまま使い、上級者向けの切り口で展開します。反対に、そこまでファッションに強くない媒体では、ファッションの全体像を伝えるのではなく、シーズンテーマ(例えば、ロマンティック、マスキュリン、スポーティーなどのキーワード)の一部分やカラーなど、トレンドのエッセンスをテイストにあわせて切り取って咀嚼し、ビジュアルで読者にわかりやすく説明します。ですから、ページの中に凝ったデザインの服は減り、自然とベーシックなものが増えていきます。

加えて、トレンドはそこにあるキャズム(溝)を越えられずに、一部の人の間だけで流行り、その後、自然消滅していくというパターンもみられます。

さて、今回は、ファッショントレンドがどのようにマーケットの中で浸透していくのか、またそこになぜキャズムがあり、その原因が何なのかについてお話しました。次回は、このキャズムに眠っていた潜在的ニーズを掘り当てて成功した、ファストファッションとの関連性についてお話します。

ナオヨ マディソン ファッション ジャーナリスト

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ナオヨ マディソン / Naoyo Madison

青山学院大学 国際政治経済学部卒業。大手総合商社に入社し、配属先の繊維本部で欧州系インポートブランドを担当。その後、パリ ソルボンヌ大学に留学する為に渡仏。帰国後は、ラグジュアリーブランドを扱うセレクトショップでアシスタントバイヤーとして勤務した後、イタリア系ブランドのジャパン社に転職。数社にてキャリアをつみ、MDバイヤーとして活躍。現在は、ジャーナリストとしてロンドンやパリをはじめとする国内外のファッションショーをまわり、ランウェイレポートやインタビュー、ファッションビジネスを中心とした記事を執筆する。

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