「コミュ力の達人」の働き方と伝え方の極意 世界基準のビジネスコミュニケーションとは
ムーギー:そのエピソードを読んだときに、私はびっくりしたんですよ。融資先のデベロッパーのために奔走されるというのはわかるんですけど、その先のエンドユーザーのことまで想いをはせるなんて、なかなかできることじゃないなと。
ただ一方で、そうした利他主義には、潜在的なリスクもあるように思います。
伊藤:例えば、どんなことでしょう?
ただ単に喜ばせるだけではダメ
ムーギー:「お客様の笑顔のために」だけが動機になっていると、承認欲求を満たすことが目的になりかねない。ちょっと不適切な例かもしれませんが、「ご主人様の言うことを聞いて、褒められて、喜んでいるペット」と同じようになってしまう人もいると思うんですよ。
伊藤:それはまったくそのとおりです。ただ喜ばせるだけではなくて、どんなふうに喜んでくれたらいいのか。そこに自分の意志がないと、単なる使い走りのようになってしまうリスクはあります。
ムーギー:どんな価値で喜ばせたいのかが大切なんですよね。
伊藤:そして、その結果、どんな世界を作りたいのか、ということもですね。そういうことがまったくできていなかった私でも、今こうして、楽しく仕事ができています。だから、「初めからやりたいことなんてなくても大丈夫」という想いを込めて、自分の経験や学びを伝える活動に尽力しているんですよね。
ムーギー:その「伝える」ということについても、お話を伺っていきたいですね。伊藤さんは「伝えるコミュニケーションのプロ」としても御高名ですが、「伝える」ときにはどんなことを大切にされていますか?
伊藤:まず、自分が読者に「教える」というスタンスではなくて、伴走して励ますようなスタンスを心がけていますね。
ムーギー:確かに、伊藤さんは上から目線ではなく、“Side by Side”ですよね。具体的な手法としてはいかがですか?