2桁成長、「アジア医療市場」へ日本企業が熱視線 三井物産やテルモなど出資や提携が相次ぐ

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ホテルかと見まがうようなグレンイーグルス香港病院のメインエントランス(写真:三井物産)

世界屈指の金融街、香港のセントラル(中環)から車で約20分。香港島南部に位置する「黄竹杭」と呼ばれるエリアの一部に、総合病院が林立する場所がある。

外壁が薄汚れた古い病院が多い中、白色の外壁を基調とした高級ホテルを思わせる外観の病院がグレンイーグルス香港病院(港怡医院)だ。2階まで吹き抜けのメインエントランスは開放感があり、7階建てのうち4階の一部には屋上庭園が設置されている。

アジア最大の病院グループへ出資

同院は2017年に開業した民間病院で、運営するのはマレーシアにあるアジア最大級の民間病院グループ、IHHヘルスケア傘下のパークウェイ・パンタイだ。IHHヘルスケアはマレーシアとシンガポールの証券取引所に上場しており、香港以外ではシンガポール、マレーシア、インド、ブルネイなどに約10カ国に80病院、1万5000床以上を展開している。

グレンイーグルスの強みは、最先端医療機器の導入をはじめとする先進的な病院設備にある。香港では2台目で、陽電子放射断層撮影(PET)と磁気共鳴画像(MRI)を同時に撮影できる最新の「PET/MRI」を導入したほか、患者への配薬を香港で初めて自動化した。また標準的な病室でも1部屋2人までとし、患者と医療関係者が使用するエレベーターや廊下などの動線を分けるなどプライバシーへの配慮や効率化を追求した。

グレンイーグルス香港病院の病室。まるでホテルのようだ(写真:三井物産)

IHHはアジア各地で香港のグレンイーグルス病院のような先進的な医療施設を展開し、各地の中高所得層の支持を獲得して規模を拡大している。同社の筆頭株主である三井物産は2011年に924億円を出資した後、2018年11月には約2300億円の追加出資を行い、現在32.9%を保有する筆頭株主だ。

三井物産がIHHに出資する狙いは、経済発展や高齢化を背景に高度医療の需要が高まっている中国市場での事業拡大だ。三井物産(香港)の鷲北健一郎会長は「中国に近いグレンイーグルスでの経験やIHHがアジアで培ったノウハウを活用して中国市場の展開を図る」と話す。グレンイーグルスの患者のうち、約3割が中国本土を中心とした香港外からの医療ツーリズム目的の患者であり、「中国本土ではまだ受けられない検査や投薬治療を求めている証しで、中国市場のポテンシャルを感じる」と鷲北氏は話す。

IHHは2019年に四川省・成都に中国本土初となる拠点病院を開設。2020年には上海に病院を開設する予定だ。三井物産は病院だけでなく、中国でのヘルスケア分野の成長も企図。2019年6月には中国の国有複合企業である華潤集団などとヘルスケア産業を対象とした1000億円規模のファンドを設立した。

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