人生を狂わせることもある「毒親介護」の現実 介護をして毒親と気がつくケースも

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──やりきれないですね。

「認められたい」「報われたい」は、親に変わってもらうのが前提ですが高齢の親には難しい。老年学の第一人者、長田久雄・桜美林大学教授は「健康的な諦め」を提唱しています。死ぬまで変わらなくても、しょうがない、と。「礼も言わずに死にやがって」と思うよりも、いろいろあったけどできる範囲で金は出した、半年は面倒を見た、自分はよくやったと考えたほうが救いになると、取材を通して感じました。

それと、老いによる変化を念頭に置くべきです。誰しも老いれば頑固になり、物忘れもする。毒親だからではなく、老いによって毒親的に見えることがある。「昔から私を無視する」という人に「耳が聞こえにくくなっているのでは」と話したら、ハッとしていました。

「親を捨てる」という選択肢もある

──絶対に毒親介護が無理なら?

捨てる。積極的に推奨するわけではありませんが、親を捨てるという選択肢を知っておくのは重要です。親の介護はすべきという圧力に負けて、大嫌いな親を抱え込み、最悪の場合殺してしまうという結末は避けるべきです。子供が親を捨てても何とかなる。子供がいなくても介護サービスを受けている高齢者はいるのですから。

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捨てるときは、全然関わらないのか、少しは関われるのかを判断し、関われるならどこまでかを決める。施設入所の保証人にはなるとか、月に○回は訪問するとか。それと、介護事業者にこれまでの親子関係や今後できることを話す。子供側の本音がわからないと、「こんなはずじゃなかった」というケアプランになるかもしれません。

──それにしても、事例の方々はよくここまで深い話をしましたね。

私自身、離婚した夫の母の介護という理不尽な状況で経済的にも困窮しました。介護は美談では済まないという点で共感し、胸襟を開いてもらえたと思います。兄弟間の葛藤など次につながる話も蓄積できました。

(聞き手 筒井幹雄)

週刊東洋経済編集部
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