人生を狂わせることもある「毒親介護」の現実 介護をして毒親と気がつくケースも

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──とはいえ、事例では毒親の面倒をよく見ている感じです。

介護が必要になった親は、以前と違い弱々しくなっているし、自分の哀れさを子供にアピールする親もいます。また、親から傷つけられてきた人たちは、親の命のタイムリミットが迫っているのを目の当たりにすると、なおのこと、「死ぬ前に一言謝ってほしい」「自分を認めてほしい」と考えて、放っておけなくなりがちです。

──そこに危うさを見ています。

誰もがやったことに対して認められたい、報われたいと思う。在宅介護は関係が濃密になり、周りの意見を得にくい。憎い親の介護が生きがいになり、承認欲求が強いあまり、言うことを聞かない親に暴力を振るうこともある。「視野狭窄」に陥っている危うさに当事者が気づかない可能性があります。

毒親介護で人生が崩壊する懸念も

──毒親を“発見”することもある。

親の老いは過去と家族関係をむき出しにするんです。子供の頃に暴力を振るわれたわけではないけれど、言葉の端々にとげがある、ほかの兄弟をひいきしていると感じていた、改めて介護で接触が増すと、自分が愛されていなかったとわかるのです。気づいてからつらいのは、周囲が理解してくれないこと。本人には重大問題なのに、「考えすぎだ」とか言われる。

石川結貴(いしかわゆうき)/家族・教育問題、青少年のネット利用、児童虐待などを取材。これらのテーマのコメンテーターとしてのテレビ出演、講演など幅広く活動。義母を11年間介護、現在は実父を遠距離介護中。著書に『スマホ廃人』『ルポ 居所不明児童』『ルポ 子どもの無縁社会』など。(撮影:今井康一)

──毒親の介護で、自分の人生が崩壊する懸念もあります。

都内在住のあるサラリーマンは、九州で一人暮らしの母親に認知症の症状が出たけど、妻も仕事を持っているので自分が行くしかない。各種申請ができるのは平日なので隔週で休みを取って行く。「明日は出社」と予定していても、母親の問題行動で戻れなくなったりで、周囲の視線が冷たい。「いつ潰れるかわからない」と、言っていました。毒親でなくても、1人で見ると介護離職のおそれがあります。

実際、仕事を辞めて、そろってアルツハイマーの症状が出た「無関心な父とキレやすい母」を実家で介護している女性は、親の貯金も自分の貯金も減少し、自分の老後破綻が避けられない。「親が死んだら自分も死にたい」。自分の娘に同じ思いをさせたくないからです。

また、未婚で無職となった女性は、毒親だった母を介護しながら無職の弟妹とともに母の年金で暮らしていますが、「毒親だった人が子供に世話されて、子供のほうは全然報われない」と言います。

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