殺人犯にされた人が語る「ネットリンチの恐怖」 心を病まないようにするには…
主にアルバイトの人などが勤務先で悪ふざけをした動画をSNSに投稿し炎上する『バイトテロ』も、情報の拡散性を軽視してしまった結果だという。
「たとえ、面白がってくれるような知り合いにしか見られないように設定にしていたとしても、悪意なく第三者に見せてしまうこともありえます。また、Instagramのストーリーは24時間で消える設定だと考えている人もいますが、24時間も世界中に公開されているんです。
見ている人がスクリーンショットや画面の挙動を動画で撮影すれば、デジタルタトゥーとして一生残ってしまう。SNSは、内緒の話をしているつもりでも、全世界の人が見られる状態にあると思っていたほうがいいと思います」
万が一、自分がデマや中傷被害に巻き込まれてしまった場合、どうしたらいいのだろうか。
「僕のところにもたくさんの相談がきますが、TwitterやInstagramに嫌がらせをしてくるアカウントを報告しても、“利用規則の範囲内”となってしまい、情報開示やアカウントの凍結、強制退会などの措置に至ることはほぼありません。
もし法的措置に出る場合は、まず第1にURLがわかる状態でスクリーンショットを撮るなど、証拠を集めます。第2にその後、誹謗中傷を書かれたとしても絶対にやりあわないこと。つい感情的になって相手に対して乱暴な言葉を使ってしまうと、被害者と加害者の関係性が崩れてしまいます。
基本的にはヤラレっぱなしの状態で初めて被害者として成立するので、“そういうことはやめてください”“事実無根です”と毅然とした対応をすることです。そのうえで、“これ以上やったら刑事告訴します”と警告してください」
キクチ氏によれば、「警告を無視する人に対しては、悪質性が強いと判断される」のだという。
警察を動かすためには
Twitterなどで一般の人から多くの相談を受けるようになったため、アドバイスができるようにまとめているのは、自作の「事件ノート」だ。
「何年も続けているのですが、事件に対してどこの警察署が動いたかっていうのをある程度、把握するためノートにまとめています。“その地域の警察署は今まで動いていないけど、この地域の警察署だったら対応してくれる”とか、“サイバーパトロールはどこの都道府県警がよく捜査している”とか、わかるようにしておくといいんです。
なかなか、ネットでの誹謗中傷の捜査を受けてくれるような警察官の方はいらっしゃらないので、そういう事例に対応できる刑事さんを探しながら書き留めています」
TwitterやInstagram 、FacebookなどのSNSは母体が海外にあるため、英語でやりとりをしなければならない。「ネット捜査」と「英語」、いずれも堪能な刑事は希少といってもいい。捜査が始まるまでにも、なかなか時間がかかる場合もあるのだ。いい警察官に巡り合って、進展があったとしても油断はできないという。