「バカの壁」はネット時代にますます高くなる 養老孟司×新井紀子「バカの壁」対談<上>
養老:今日は、若い方にお話を伺いたいと思ってやってきました。
新井:私のほうこそ、いろいろ教えていただきたいと楽しみにしてまいりました。私は以前から勝手に先生とのご縁を感じておりました。先生が理論社の「よりみちパン!セ」シリーズで『バカなおとなにならない脳』(2005年)を出版されたのと同じ時期に、私も同じシリーズで『ハッピーになれる算数』(2005年)を出版したんです。そのとき、先生の本も読ませていただいて、もちろん『バカの壁』(2003年)も拝読しました。
養老:『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んで面白いと思ってね。ぼくはだいぶ前から、読むだけで子どもを教育してみたらどうなのかなって思っていたんですよ。それで、子どもの読解力を調べている人のお話を聞きたいなと。
ネットワーク世界にはびこる嘘
養老:書評を頼まれて『デジタル・ポピュリズム』(福田直子著、2018年集英社新書)を読んだんですけど、ちょっと驚きました。たとえば、ぼくなんかトランプ現象とかイギリスのEU離脱は政治の文脈で理解してたんです。でも、福田さんの本を読むと、あれは実はネット(の強い影響)だったんだということを丁寧に説明しています。それで、やっぱりそうか、違う力学があるんだな、と。つまり、読解力のことです。
新井:私もそう思います。